船の塗料について

2018年日本ペイント株式会社様の新入社員入社式にて、田堂社長が仰った祝辞の中に、

司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」に社名こそ登場されませんでしたが、日本海海戦には日本ペイントの船底塗料が縁の下の力持ちとして活躍したお話がありました。

 

歴史に「もしも」は無いけれど(過去の事実だから)、

日本海海戦に日本ペイント製の船底塗料が無かったら、日本海軍はロシア・バルチック艦隊に負けたかも?

(歴史は、勝者が書くと言う言葉もあります)

 

当時アフリカの南端「喜望峰」を超えたバルチック艦隊は、英国支配下の港に停泊できずにマダガスカル島とベトナム(当時はどちらもフランス領)でようやくの休息をりましたが、質の悪い石炭しか入手できなかった上、本来2ヶ月に1回程度船底のフジツボや苔などを落とすのに、7か月間手入れが出来ぬまま、対馬海峡までよたよたと航行してきたのでした。(当時日英同盟があったため)

 

 

フジツボなどの海洋生物が船底についているとどうなるのか?

結論から申し上げると、主に以下の2点のデメリットが発生します。

①船の速度が遅くなる

②船の燃費が悪くなる

 

船底にこびりついてしまった付着物や付着生物が、船体を重くしたり、その凹凸によって摩擦抵抗を生み、速度が落ち、その速度を上げるために燃料を必要とするためです。

 

そのため船の底に着く海洋生物を防止するための塗料が開発されるようになります。

それが船底塗料です。

 

30年位前までは、有機錫系の環境に優しくないものが使われていて、海洋汚染が問題となりました。

 

 

 

 

歴史

まず人類の祖先が、竹を結び合わせたり葦を編んだりして船を作り始めたのが、船の歴史のスタートです。

帆船の時代には、「ファウリング(Fouling=汚い、パイプの詰まり、網が縺れた、の意味。野球のファールもこの言葉から)」と呼ばれるフジツボや海藻、雑草の増殖により船の速度が遅くなる被害をうけ、運搬業が成り立たなくなってしまうので、

Muntzと呼ばれる、アルファ真鍮より多量の亜鉛を含み、強度の高い真鍮や、銅版の薄い板を船体に釘打ちして、海洋生物の付着を防いでいました。

(但しこの時の釘は、現代のような丸釘ではなく、四角い銅のいわゆる「Cut Nail」のため、抵抗が強かったのが難点でした)

この金属で覆った船の中でもお酒の名前として有名なのが「カティ―サーク」です。

 

 

19世紀、蒸気機関が発明され、それが船の動力(外輪船)として採用された結果、それまでの風任せの帆船に比べ圧倒的な推進力が確保されたので、戦争などで出航するようになります。

その際は木材の上に装甲鉄をはり、ついには鉄板を真っ赤に焼いたリベットでカシメた準鉄製の船ができます。

 

外輪からスクリューに代わっていく中で船の速度とその維持が重要になり、船底塗料の必要性が増しました。

それまで、船に塗っていたのはタールで、先に説明した船底塗料の目的とは異なり、防水を目的としていました。

 

 

合わせて読みたい!

塗料の歴史④ アスファルトとタールについて

 

 

 

現代の船

 

現代の船船には、公園で皆様が漕ぐボートから、数十トンの巨大タンカーまであります。

(カヌーとカヤックは船とは言い難い構造につき除外します)

 

巨大タンカーはお相撲さんと同じで、自分の真下が見えませんし、止まろうと思っても、かなり進んでから止まります。港の停泊では、タグボートの助けなしで接岸できません。大きい分手がかかるのです。大きな坊やです。

これくらいのサイズになると、海洋生物の付着による抵抗が、燃費に及ぼす影響が大きいのは誰でも簡単に分かります。

 

小さな船は、「小型船舶」と呼ばれる漁船やプレジャーボートが主流ですが、あまり皆様その点には気を使いません。

ヨットハーバーには、自動車でいうガソリンスタンドがありそこで給油をします。場所によっては予約しないといけなかったり色々ですが、通常の車用ガソリンスタンドのように、「あそこのほうが安い」であるとか、「こちらの方が割引が良い」などと選ぶことはできません。大抵の場合、一つの海岸には一つの給油所だからです。

 

ともかく現在、小型船舶で塗料のメンテナンスに気を配って、燃費を上げている方は少ないのです。

何故って、海の燃費は分からないから。海図にらみながらほぼ直線で行く遠路航路では如実に出る燃費計算も、近海でぐるぐる回っているとよく分かりません。

(その効果は、個人差こそあれど、水生生物が付着した状態と比べて5%も変わってくると言われています)

 

 

小型船舶で現在主流のお手入れは、前の塗料の上に新しい塗料を塗り重ねるのが一般的ですが、そうするとどんどん塗膜が厚くなって船が重くなってしまい、折角お手入れをしても燃費が変わらない、あるいは悪くなってしまう可能性があります。

 

旧塗膜を一度剥離し、新しい塗膜を塗ることで、船をできるだけ軽く、かつ滑らかな船底を保てるため、高回転せずとも、低速でも滑走でき燃費が良い状態を保てるのです。

 

 

今の時代、小型船は主にFRPやアルミ、グラスファイバーなどで作られています。

少し大きくなると、鉄で出来ている船もあります。

英語では船体の事を日本語のように「Ship body」とは言わず、「Hull」と呼びます。これは「外皮・さや・殻・覆い」と同じ語源です。

英語で「Hull Paint」と検索すると、イギリスの会社のペンキが出てきます。こちらは上部塗料ですが、太陽光への耐久力に優れると最初に書いてあります。紫外線に強くないと務まらないのでしょう。

船底や喫水部の塗料であるHull Paintの使用方法は、下記の通りです。

 

●淡水ボートの場合

新しくペイントを塗り直す前、付着生物を取り去る下地処理を行いますが、電動スクレイパーやサンドブラスト等を使わずに、必ず手で、プラスチックや他の軟らかいスクレイパーを使用することと書いてあります。

 

●海水ボートの場合

メンテナンス冊子には、サンドブラストを使用と書いてあります。

 

 

表現が微妙に違うので迷うのですが、淡水ボートの方が相対的に海水ボートよりも小型であること、川の方が海よりも水生生物が付きづらいことなどが、標記の差であるのではないかと思います。

 

 

 

大きなタンカーや、バルク/コンテナ貨物船、旅客船(クルーザー含む) と 漁船/プレジャーボートの違いは、決まった航路を行かないことです。

特に漁船は、網を揚げるときなどバランスをとるのが難しいので、バラストタンクの設計が難しいと思われます。

台風に遭遇すれば、シケに揉まれる為、復元性なども重要になってきます。

また、鉄で作られた荒れる外海にでる漁船と、どちらかと言うと速さを求めるプレジャーボートはあくまで趣味の世界なので、漁船の様に剛性や居住性を犠牲にする発想がないというのも違ってきます。

楽しく過ごすための物ですので、ヨット系は木製で作られ内装塗料も含め基本豪華な造りです。

 

 

先日ポルシェがデザイン担当した全長41mのカタマラン型クルーザー「RFF135」が出ていました。

値段も特別でした。

10人の乗船者に、10人のクルーがつく豪華ラグジュアリー版です。

 

ドイツ航空用エンジン製造会社「MTU」製のV16ツインターボディーゼルエンジンで35ノット(約64km/h)を出せますが、1時間に750リッターのディーゼル燃料を使用とのこと。

自家用車年間ガソリン使用量が500リッターを超えない私には無縁の世界ですね。

 

で、主題の塗料はと言えばMr. Ritvan Metso / Managing Director(イギリス式に言う社長)が担当されたとのことですが、

高張力アルミニウムの船体に塗られる塗料は現在不明です。

 

公開された建造中写真には、白色の下地塗料が塗られている感じが有ります。

アルミなので、アルマイト処理とも思いましたが、窓マスキング部の半透明シートにも白い何かスプレーされた跡があるので通常塗料と思われます。

高速でぶっ走ると海洋生物や藻は自然にすっ飛び去るのか、船底塗料は塗られていないようです。

 

 

 

まあ、船脚の遅い船は高速で走れないので、塗料はきちんと剥離してから新しい塗装を施し、表面粗度を上げ(ツルツルにすること)、海水との摩擦抵抗を下げるのが一番です。

他にも摩擦抵抗をなくす方法として、他にも

船首海面下底から空気を流して海水摩擦抵抗を下げる方法や、

海水時、己消耗型や現在主流の加水分解型の船底塗料がもつ、「少しずつ剥がれる性質」にトムズ効果(微量のポリマーまたは界面活性剤 を添加することで,乱流摩擦抵抗が大幅に低下する現象で,1948 年にToms により発見され,以来,劇的な現象であることから,多くの研究がされている)を起こさせるように塗料を改良する方法などが考えられていますが、

まだ実用化には程遠い為、アメンボのようにスイスイ水面を移動するように巡航したい場合は、ペンキは剥がしてから塗り直しましょう。

 

ちらりと先にも申し上げました通り、水生生物が付着しているときよりも、小型船で5%以上の燃費改善、大型船ならば最大時速5ノットくらいスピードアップするそうです。

 

 

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