工業用の有機溶剤・薬品メーカー 三協化学(株)の「お知らせ・お役立ち便覧」ページ

酢酸ブチルについて、化学の知識がない方にでもご理解いただけるように、わかりやすく解説します。

酢酸ブチルとは

酢酸ブチルとは、エステル系の有機溶剤の一つです。
ブチルアセテートとも呼ばれます。また、酢ブチ（サクブチ）と略されることも多いです。

常温で液体、無色透明です。果物のような匂いがあります。実際にリンゴやナシなどの果物にも含まれており、飴やアイスクリームなどの香料として利用されています。

香料以外でも、有機溶剤としてさまざまなものに使われています。

エステル系とは、酸とアルコールを脱水縮合した物質のことで、エステル結合（-COO-）を持っています。代表的なものは、酢酸ブチルの他に酢酸エチル、ジメチルカーボネート、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸アミルなどがあります。

酢酸ブチルの化学式は、C6H12O2です。炭素（C）が６個、水素（H）が12個、酸素（O）が２個でできています。酢酸ブチルには、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸sec-ブチルの異性体４つが存在します。

このように酢酸ブチルの異性体４つには、性質に違いがあります。

一般的に、単に「酢酸ブチル」と言った場合、酢酸n-ブチルを指します。以後は主に酢酸n-ブチルについて見ていきます。

酢酸ブチルは、油脂の溶解力は低いものの、樹脂の溶解力が高いです。また、他の有機溶剤に溶けやすいですが、水にはあまり溶けません。

酢酸ブチルの合成方法

酢酸ブチルは、酢酸とn-ブタノールを少量の硫酸の下で反応させて作られます。

酢酸ブチルの利用

酢酸ブチルは、ニトロセルロースや各種樹脂、エナメル、ラッカー、ショウノウ、セルロイド、ゴムなどの溶剤、合成皮革、人造真珠、リノリウム製品の接着剤、ペニシリンの精製、コーティング紙、安全ガラス、可洗壁紙などの製造、織物のプリント製造、蛍光灯内部塗料、航空機塗料、有機酸、医薬の抽出、各種果実エッセンスなど幅広く使われています。

引火性と消防法

酢酸ブチルは、引火点（火や火花、静電気などの発火源を近づけたときに燃え始める最低温度）が22℃と低いため、消防法上の第２石油類非水溶性に分類され、規制されています。

同法の規制を受けずに保管できる指定数量は、1000Lです。
さらに同法の規定に基づいた危険物倉庫がなくても保管できる少量危険物（指定数量の1/5）は200Lです。

消火には、通常の棒状放水や水噴霧では拡散して火災が広がる恐れがあります。泡消火剤や粉末消火剤、炭酸ガス、乾燥砂類などで消火しましょう。また、消火を行う人は、適切な呼吸器、防護服が必要です。

※ちなみに同じエステル系有機溶剤の酢酸エチルは引火点がマイナス４℃と酢酸ブチルよりも引火しやすいため第１石油類非水溶性に分類されています。

酢酸ブチルの毒性と有機則

酢酸ブチルは、高濃度で吸引すると、頭痛、吐き気、めまい、呼吸困難、意識喪失の症状が出ることがあり、有機溶剤中毒予防規則上の第２種有機溶剤等に分類され、規制されています。

取り扱う場合は、同規則を守る必要があります。

有機則については、別記事「有機溶剤中毒予防規則（有機則）とは？わかりやすく解説」で詳しく説明しておりますので、併せてお読みください。

そのほか、酢酸ブチルは船舶安全法の引火性液体類や海洋汚染防止法の海洋汚染物質Y類にも該当しています。

三協化学の酢酸ブチル関連製品

酢酸ブチル（酢ブチ）

樹脂溶解用酢酸エチル　代替ファインソルブSB⋯環境対応型樹脂溶解剤。樹脂溶解力と乾燥性のバランスに優れ、酢酸エチルや酢酸ブチル、MEKの代替として使用可能。第１石油類。

樹脂用溶解用MIBK　メチレンクロライド代替　ファインソルブEM⋯環境対応型樹脂溶解剤。溶解力が高く、第２石油類の中では乾燥性が高い。キシレン、MIBK、ジクロロメタン、酢酸ブチル、酢酸エチルなどの代替として使用可能。

他にも代替として使用可能な商品がございますので、お気軽に下記リンクよりお問い合わせください。