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有機溶剤
2025.06.12
酢酸エチルとは?成分や特徴などをわかりやすく解説します
酢酸エチルについて、化学の知識がない方でもわかるように丁寧に解説します。
目次
酢酸エチルとは
酢酸エチルとは、エステル系の有機溶剤の一つです。
エチルアセテートとも呼ばれます。また、酢エチと略して呼ばれることも多いです。
常温で液体、無色透明です。
熟したパイナップルやメロンのような果実臭を持っています。実際に多くの果物の果実油のなかにも広く含まれており、食品添加物としても利用されています。
身近なものですと、子ども用の風船玉やプラバルーンと呼ばれる、チューブに入った樹脂をストローの先につけて膨らませて遊ぶおもちゃに使用されています。
※有機溶剤については、別記事「有機溶剤とは?わかりやすく解説します」で丁寧に解説しています。
酢酸エチルの化学式はC4H8O2で、炭素(C)が4個、水素(H)が8個、酸素(O)が2個でできています。示性式はCH3COOCH2CH3です。構造としては、酢酸のカルボン酸部分とエタノールのヒドロキシ基が脱水縮合してできた物質です。
エステル系の有機溶剤は、酸とアルコールを脱水縮合した物質のことで、エステル結合(-COO-)を持っています。
代表的なエステル系有機溶剤としては、酢酸エチルの他に酢酸ブチルやジメチルカーボネート、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、酢酸アミルなどがあります。
酢酸エチルの特徴は以下の通りです。
項目 | 概要 |
名称 | 酢酸エチル |
別称 | エチルアセテート |
CAS番号 | 141-78-6 |
化学式 | C4H8O2 |
引火点(℃) | -4 |
発火点(℃) | 426 |
沸点(℃) | 77 |
比重 | 0.902 |
有機溶剤中毒予防規則(有機則) | 第2種有機溶剤等 |
PRTR法 | 非該当 |
消防法 | 第1石油類非水溶性 |
毒物及び劇物取締法(毒劇法) | 劇物 |
悪臭防止法 | 特定悪臭物質 |
酢酸エチルは、油脂の溶解力は低いですが、樹脂の溶解力が高いです。また、他の有機溶剤に溶けやすいですが、水には約8%ほどしか溶けません(20℃)。
酢酸エチルの合成方法
酢酸エチルの合成方法としては、硫酸を酸触媒として酢酸とエタノールの混合液を加熱して脱水縮合させて、生成された酢酸エチルを連続的に蒸留で取り出すエステル化や、アセトアルデヒドを塩基触媒により酢酸エチルに転換するティシチェンコ反応、昭和電工が開発したエチレンと酢酸からの直接合成などがあります。
日本では、高価なエタノールを使用しないティシチェンコ反応を利用した酢酸エチルの生産が主流となっています。
酢酸エチルの利用
酢酸エチルは、ノンアセトンの除光液にアセトンの代わりとして配合されているほか、塗料や接着剤、エチルセルロース、人造皮革、リノリウム、コーティング紙、レーヨンなどの溶剤として用いられています。また模造真珠の接着溶剤、印刷インク、医薬品、有機酸の抽出溶剤、パイナップルやバナナ、イチゴなどの果実エッセンス、ウイスキー、バターなどのフレーバーなど幅広い用途で使われています。
引火性の高さと消防法
酢酸エチルは、引火点(火や火花、静電気などの発火源を近づけたときに燃え始める最低温度)がマイナス4℃と極めて引火しやすく、消防法上の第1石油類非水溶性に分類され、規制されています。
同法の規制を受けずに保管できる指定数量は、200Lです。
また、同法の規定に基づいた危険物倉庫がなくても保管できる少量危険物(指定数量の1/5)は40Lです。
消火には噴霧水や二酸化炭素、粉末の消火器が適しています。通常の棒状放水は酢酸エチルが飛び散り、火災を広げてしまう恐れがあるため避けてください。
消防法についての詳しい内容は、別記事「消防法とは?該当する有機溶剤、指定数量の考え方などもわかりやすく解説」で詳しく説明しておりますので、併せてご覧ください。

そるぶ
酢酸エチルはとっても燃えやすいんだよ!取り扱う場合は、火の気に注意しようね!約束だよ!
酢酸エチルの入った反応釜へ粉末の原料を投入する作業中に火災
酢酸エチルによる火災はたびたび発生しています。
実際に、ある作業場で酢酸エチルの入った反応釜へ粉末の写真用薬品原料を投入する作業中に火災が発生した事故が起きています。
火災の原因としては、粉末を投入する作業中に静電気が発生し、それが発火源となったとかんがられています。
このように酢酸エチルは、静電気などでも簡単に火が着いてしまう特性を持っているので取り扱う際は十分な注意が必要になります。
酢酸エチルの毒性
酢酸エチルは、高濃度で吸入すると麻酔作用や気道、呼吸器系の障害、中枢神経への影響などを与えることがあります。大量に曝露すると最悪の場合、死亡します。
また低濃度であっても頭痛やめまいなどの症状が表れることがあります。
酢酸エチルは、繰り返し皮膚にふれると、脱脂作用により皮膚の脂肪を溶かし、浸透しやすくなるほか、眼に対する刺激性もあります。
こうした毒性により、有機則や毒劇法で指定され規制されているほか、特有の臭いから悪臭防止法の指定物質としても規制されています。
有機溶剤中毒予防規則(有機則)
有機溶剤中毒予防規則は、労働安全衛生法に基づき有機溶剤の安全基準を定めた厚生労働省令です。
有機則では、有機溶剤44種を毒性が高いものから順に第1種、第2種、第3種に区分して規制しています。
このうち、酢酸エチルは第2種有機溶剤に指定されており、使用にあたっては有機則に定められた細かな規則を守る必要があります。
詳しくは、別記事「有機溶剤中毒予防規則(有機則)とは?わかりやすく解説」で説明しておりますので、ぜひお読みください。
毒物及び劇物取締法(毒劇法)
毒物及び劇物取締法(毒劇法)とは、広く一般に流通している化学物質のうち、健康被害を起こす恐れが高い物質を規制する法律です。
指定した化学物質を毒性が強いものから順に特定毒物、毒物、劇物に区分して規制しており、酢酸エチルは劇物に指定されています。
具体的な規制内容としては、営業者の登録制度や容器などへの表示、販売(譲渡)の手続き、盗難・紛失、漏洩防止策、運搬・廃棄の基準などが定められています。
詳しくは別記事「毒物及び劇物取締法(毒劇法)とは?有機溶剤との関係を中心にわかりやすく解説」でご確認ください。
悪臭防止法
酢酸エチルは、その臭いの強さから悪臭防止法上の特定悪臭物質(全22物質)の一つとして規制されています。
三協化学の酢酸エチル関連製品
弊社の酢酸エチル関連製品には以下のようなものがあります。
ファインソルブE⋯環境対応型樹脂溶解剤。酢酸エチルやアセトン、メチレンクロライドなどの代替品。浸漬やウエス拭きなどで使えます。
ファインソルブSB⋯環境対応型樹脂溶解剤。酢酸エチルや酢酸ブチル、MEKなどの代替品。樹脂溶解力と乾燥性が高い。浸漬やウエス拭きなどで使えます。
ファインソルブTH⋯環境対応型樹脂溶解剤。酢酸エチルやアセトン、シンナーなどの代替品。軽度な脱脂洗浄も可能。浸漬やウエス拭きなどで使えます。
酢酸エチルや酢酸エチル代替品に関する疑問や質問、お求めの方は下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。
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