消防法とは
この法律は、読んで字の如く、火災を予防・警戒し私たちの身を守ること、
また被害を最小限に留めることを目的として
危険物の定義づけをする、日本独自の法律です。
今回は、それぞれの有機溶剤が消防法上でどのように位置づけられているのかご紹介していきます。
消防法上の危険物
消防法では、火災が起こる危険性のある物質を危険物として定めており、以下のように区分しています。
類 | 名称 | 状態 |
第1類 | 酸化性固体 | 固体 |
第2類 | 可燃性固体 | 固体 |
第3類 | 自然発火性物質及び禁水性物質 | 固体または液体 |
第4類 | 引火性液体 | 液体 |
第5類 | 自己反応性物質 | 固体または液体 |
第6類 | 酸化性液体 | 液体 |
有機溶剤は第4類危険物の引火性液体に該当するものが多いです。
(メチレンクロライドや、トリクロロエチレンなど、一部例外もあります)
第4類危険物に該当するものは常温(20℃)で液体であり、固体のものはありません。
また、第4類危険物に該当するものは、可燃性の蒸気を発生するため、近くでつけた火や静電気などが原因で燃えてしまうため、取り扱いにはくれぐれも注意が必要です。
もし第4類危険物に火がついてしまった際はABC消火器を使って消火します。
ABC消火器とは?
消火器のタイプの一つで、Aの場合もBの場合もCの場合も対応できる消火器というものです。
【Aの場合とは】
紙や木、繊維などが燃えて、水で消せる火災
【Bの場合とは】
油や可燃性液体などが燃えて、水で消せない火災
【Cの場合とは】
配電盤やコンセントなどが燃えて、消火に水を使うと感電する恐れのある火災
絶対に水で消火しようとしてはいけません。
第4類危険物の引火性液体には、基本的に水に溶けないものが多いため、水をかけてしまうと燃えている液体が飛び散ったりして、火災が広がる可能性があります。
(天ぷら油に引火した際の火災も同様に、水で消火しようとしてはいけません!)
指定数量について
消防法で指定された危険物は、「指定数量」という形で、保管できる量が制限されています。
第4類危険物は引火点等の違いにより指定数量の量が7段階に分かれています。
品名 | 引火点 | 性質 | 指定数量 |
特殊引火物 | -20℃以下 | 50L | |
第1石油類 | 21℃未満 | 非水溶性 | 200L |
水溶性 | 400L | ||
アルコール類 | 11~23℃程度 | 400L | |
第2石油類 | 21~70℃未満 | 非水溶性 | 1000L |
水溶性 | 2000L | ||
第3石油類 | 70~200℃未満 | 非水溶性 | 2000L |
水溶性 | 4000L | ||
第4類石油類 | 200~250℃未満 | 6000L |
ここで注意が必要なのは、2種類以上の第4類危険物を持っていた場合の指定数量です。
第1石油類・第2石油類・第3石油類をそれぞれ管理する場合、(全て非水溶性のものと仮定しましょう)
第1石油類非水溶性の指定数量が200L、
第2石油類非水溶性の指定数量が1000L、
第3石油類非水溶性の指定数量が2000Lだから
合計3200Lまでの貯蔵ができる・・・、というわけではないのです。
1種類の指定数量に対して、どれくらいの割合を貯蔵するか
(たとえば第1石油類非水溶性を100L貯蔵するなら、指定数量に対して半分なので、0.5)
これを計算して、合計1未満にしなければなりません。
なので、
先ほどの例で、全て指定数量の半分(第1石油類非水溶性100L、第2石油類非水溶性500L、第3石油類非水溶性1000L)だとしても、
0.5×3=1.5で、貯蔵量オーバーになってしまいます。
指定数量以上の貯蔵・取扱いは以下の条件が発生します。
- 該当する資格をもつ危険物取扱者が監督すること(有機溶剤の場合は「危険物甲種」や「危険物乙種4類」の資格取得者)
- 許可を得た製造所・貯蔵所・取扱い所で取り扱うこと(これ以外の場所は禁止)
消防法上の危険物を保管する場合は「危険物倉庫」が必要です。
危険物倉庫とは、一般的な倉庫や物置とは違い、危険物を保管するための規定を満たした倉庫のことです。
危険物の屋内貯蔵所の条件
- 床面積1000㎡以内、高さ6m以内の平屋
- 天井を設けてはいけない
- 屋根は軽量な金属板などの不燃材料を用いる
- 壁・柱・床は耐火構造
- 梁は不燃材料で作る
- 窓ガラスには網目入りガラスを用いる
- 危険物が浸透しない構造の床
- 床は少し斜めにし、漏れた危険物をためられる溝をつくる
- 作業に支障を来さないよう採光設備をとる
(また、使用状況によっては避雷設備や蒸気排出設備が必要になります)
指定数量の1/5未満の場合
指定数量の1/5未満の量を貯蔵・取扱いする場合は、規制が発生しません。
先ほどの表で表すと以下のようになります。
品名 | 引火点 | 性質 | 指定数量 | 1/5指定数量 |
特殊引火物 | -20℃以下 | 50L | 10L | |
第1石油類 | 21℃未満 | 非水溶性 | 200L | 40L |
水溶性 | 400L | 80L | ||
アルコール類 | 11~23℃程度 | 400L | 80L | |
第2石油類 | 21~70℃未満 | 非水溶性 | 1000L | 200L |
水溶性 | 2000L | 400L | ||
第3石油類 | 70~200℃未満 | 非水溶性 | 2000L | 400L |
水溶性 | 4000L | 800L | ||
第4類石油類 | 200~250℃未満 | 6000L | 1200L |
指定数量の1/5未満の場合、各自自体の管轄する消防署への届け出の必要がありません。
(冬場一般家庭で使う灯油も、200L未満であれば少量なので消防署への届け出が不要なのと同様です)
少量危険物について
上記の、指定数量の1/5以上だけれど、指定数量に満たない場合は、「少量危険物」という扱いになります。
少量危険物は、規制がないわけではありませんが、通常の危険物よりも規制がいくらか緩和されます。
少量危険物に関する取扱い規制は、自治体ごとに定められています。必ず自治体の規定を確認するようにしてください。
例)愛知県名古屋市の場合(※一部)
- 取扱所では火気を使用しないこと
- 常に整理及び清掃を行い、不必要なものを置かないこと
- 危険物が漏れたり、飛散しないようにすること
- 危険物の保管容器は破損、腐食、裂け目などがないものであること
- 危険物を転倒、落下、引きずりなど、衝撃を加える行為をしないこと
- 地震などによる、転落、転倒など損傷を受けないようにすること
危険物倉庫や資格がなくても上記ポイントをおさえるだけで使用できますが、量を問わずしっかりとした管理が必要なのです。