トルエンとは
トルエンとは、ベンゼン環に「メチル基」が1つついた芳香族炭化水素と呼ばれる有機物です。
別名、メチルベンゼン、トルオール、トロール、フェニルメタンとも呼ばれます。
無色透明で、常温で液体です。炭素(C)が7つ、水素(H)が8つで構成された分子で、構造式は図のように書きます。
臭いが強い物質で、いわゆるシンナー臭の元となる存在です。
その臭いの強さから、悪臭防止法という法律で指定されています。
※よくあるご質問※
Q. トルエンとシンナーはどう違いますか?
A. 一部のシンナーの原料の1つがトルエンです。
シンナーとは、塗料やラッカーなどの「うすめ液」の総称です。シンナーと言ってもたくさんの種類があって、ほとんどのシンナーが有機溶剤を混合させたものです。トルエンはそんなシンナーの一部として使われていますが、全てのシンナーにトルエンが入っているわけではありません。
参考:『シンナーについて①』
トルエンの用途
溶媒として万能なトルエン
トルエンは溶解力が非常に強く、様々なもの(塗料、接着剤、ゴム、インク、油など)を溶かせるため、種々の溶媒として用いられてきました。(但し水には溶けにくいです)
例えば、塗料を希釈するためのシンナーの原料として、接着剤の粘度を落とすための希釈剤として、など幅広く使用されています。
トルエンの危険性
便利な反面毒性も強い
かつてトルエンは若者たちの間で流行してしまった、所謂「シンナー遊び」に使われた原因物質です。
トルエンを吸うことにより、吸い始めは強い快感を感じるのですが、吸い続けるうちに副作用が出て、幻覚や幻聴などの症状に見舞われたり、全身の筋肉の劣化や生殖器、脳への障害が出ます。
「シンナー遊び」と呼ばれてしまっていますが、その作用は危険ドラッグと大差ありません。その毒性により、意識不明者や死亡者が出た為、現在では毒物劇物取締法という法律で厳しく規制されています。かつてのようにトルエンや、トルエンを含む薬剤を購入することは、個人も法人も、必要な手続きや申請をしなければできなくなっています。
脱トルエンの流れ
トルエンは悪臭防止法や毒物劇物取締法だけでなく、他の法律でも規制されています。たとえば「有機溶剤中毒予防規則」、「女性労働基準規則」などでもトルエンは規制されているのです。
各法規についてはまた別の記事でご説明しますが、前述したとおり入手するのに申請や手続きが必要なだけでなく、入手後も管理や取扱いに様々な規制がかかっています。
トルエンを使用していた事業者では、最近はトルエンを使うのをやめ、少しでも安全性の高いもので今までの業務を行えるように「代替化」が進んでいます。シンナーではトルエンを使用しない、NT(ノントルエン)タイプのシンナーや、NTX(ノントルエンキシレン)タイプのシンナーが普及するようになってきています。この流れはトルエンに限らず、他の溶剤でも同じで、より安全性の高いものを使う「代替化」が進んできています。
各種法規に関する記事
トルエンが必要な場合もある
上記のように、トルエンの毒性について触れてきましたが、全ての用途においてトルエンの代わりが見つかっているわけではありません。トルエンでなければならない用途の場合もあります。
毒性が強く、懸念されがちな化学物質ですが、しっかりと管理すれば、比較的安全に使うことができます。