有機溶剤とは

溶剤とは

有機溶剤とは、の前に、「溶剤」とはなんでしょう。

漢字の通り、「溶かす」ことを目的として用いられる液体のことです。言ってしまえば塩や砂糖を溶かす水も溶剤です。

 

有機溶剤とは

そんな溶剤の中で、「有機」に限定されたものが有機溶剤なわけですが、

そもそも物質というのは「有機物(有機化合物)」と「無機物(無機化合物)」に分類されます。

 

有機物とは、炭素・酸素・水素 を中心とした化合物のことをいいます。

無機物はそれ以外の化合物の事をいいます。

前の「溶剤とは」の例で「水」を挙げましたが、水に炭素は含まれていないので無機物です。

 

有機溶剤とは、炭素・酸素・水素を中心とした、常温で液体の物質のことです。

他の特徴としては、特有のにおいをもち、その蒸気は空気よりも重く、有機溶剤の多くは引火性があります。

 

また有機溶剤は、工業用に使われているだけで約500種類以上も存在しています。

 

有機溶剤の種類

そんな500種類以上ある溶剤を分類する方法がいくつかあるのでご紹介していきます。

 

化学構造による分類

有機化合物の特性を決める特定の原子の集まりを「官能基」と呼び、同じ一般名で分類されます。

同じ官能基を持っているので、同じ分類の物質は特性も似通ってきます。

 

 

炭化水素類

炭化水素類とは、炭素(C)と水素(H)だけで構成された物質です。主に石油精製工程の派生留分を利用して作られています。

金属を腐食しない特性と、油類の溶解性も高く安価なものが多いということから、広く普及しています。

私たちに馴染みがあるものでは、衣類のクリーニング用の溶剤や、パーツクリーナーなどにも使われています。

 

また、この炭化水素類の中でも、鎖式環式の分類に更に分けられ、その中でも炭素の結合が全て単結合のものを飽和炭化水素といい、二重結合や三重

結合が含んでいるものを不飽和炭化水素といいます。

また、ベンゼン環を持っていれば芳香族炭化水素、ベンゼン環を持っていなければ脂肪族炭化水素という分類になります。ベンゼン環を持つ芳香族炭化水素は特有のにおいをもっています。ベンゼン環は二重結合を持っているので、芳香族炭化水素は全て不飽和炭化水素ということになります(不飽和炭化水素は全て芳香族炭化水素なわけではありません)。

右図はトルエンの構造式ですが、六角ナットのようなものがベンゼン環なので、トルエンは芳香族炭化水素ということがわかります。

ノルマルヘキサンはベンゼン環を持っていないので脂肪族炭化水素で、全て単結合なので飽和炭化水素です。

 

 

 

アルコール類

構造式に水酸基(−OH)を持つ物質です。

脱脂力はそこまで強くありませんが、水溶性の汚れはよく落とし、更に乾燥性も高いので他の溶剤と組み合わせて使うというところも多いようです。

身近な例では、アルコールの持つ脱水作用が、プリザーブドフラワーの脱水剤として使われたり、

インクの抽出剤として使われています。

可燃性で引火点が低いので取り扱いには十分に注意しましょう。

 

ケトン類

樹脂をよく落とす溶剤です。構造式にケトン基《R−C(=O)−R’ (R, R’ はアルキル基など)》を持っています。

ネイルアート(樹脂でできている)を落とすのに使われる除光液に含まれるアセトンもこのケトン類です。

アセトンは水に溶けますが、ケトン類全体としてはあまり水には溶けにくい傾向にあります。

炭化水素類によく混ざるので希釈剤としても使われます。

 

エステル類

エステルは酸とアルコールを脱水縮合したものです。代表的なカルボン酸エステルの構造式は (−COO−)を持っています。

エステルは樹脂の溶解力が高く、他の有機溶媒にも溶けやすいですが水にはあまり溶けません。

エステル類の一つである酢酸エチルは、そんな樹脂の溶解力を生かして、アセトンに並びマニキュアを落とす除光液として活用されています。

また、昆虫の標本をつくる際の防腐効果のある殺虫剤として使用されるケースもあります。

においが特徴的なことから、香料に使われることもあります。

ラッカー系や塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂系の塗料に主に使われます。

 

エーテル類

エーテルはアルコール同士を脱水縮合したものです。《R−O−R’ (R, R’ はアルキル基など)》の構造式で表記されるものです。

揮発性が高く、その特徴はエステル類に似ています。

エステルに似て、においが特徴的なので、香料に使われることもあります。

ラッカー系やアクリル樹脂系、アミノアルキド樹脂系、エポキシ樹脂系の塗料やその希釈剤に主に使われます。

 

 

 

有機溶剤中毒予防規則・特定化学物質障害予防規則における分類

労働安全衛生法施行令第6条ならびに有機溶剤中毒予防規則にて分類されている44種類と、特定化学物質障害予防規則特別有機溶剤に指定される12種類は、人体に対する有害性が高いとされています。

有機溶剤中毒予防規則で指定される第一種、第二種、第三種は、その表記の数字が小さいほど毒性が高いことを表しています。

また、特定化学物質障害予防規則で指定される特別有機溶剤は、有機溶剤中毒予防規則で挙げられているものよりも更に危険度が高い為、扱う際の法令も厳しくなっています。

そのため、最近では代替品への切り替えが進んでいます

第一種有機溶剤(有機溶剤中毒予防規則)

  • 1.2‐ジクロルエチレン(別名:二塩化アセチレン)
  • 二硫化炭素

 

第二種有機溶剤(有機溶剤中毒予防規則)

  • アセトン
  • イソブチルアルコール
  • イソプロピルアルコール
  • イソペンチルアルコール(別名:イソアミルアルコール)
  • エチルエーテル
  • エチレングリコールモノエチルエーテル(別名:セロソルブ)
  • エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名:セロソルブアセテート)
  • エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(別名:ブチルセロソルブ)
  • エチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルセロソルブ)
  • オルト‐ジクロルベンゼン
  • キシレン
  • クレゾール
  • クロルベンゼン
  • 酢酸イソブチル
  • 酢酸イソプロピル
  • 酢酸イソペンチル(別名:酢酸イソアミル)
  • 酢酸エチル
  • 酢酸ノルマル-ブチル
  • 酢酸ノルマル-プロピル
  • 酢酸ノルマル-ペンチル(別名:酢酸ノルマル-アミル)
  • 酢酸メチル
  • シクロヘキサノール
  • シクロヘキサノン
  • N,N‐ジメチルホルムアミド
  • 1.1.1‐トリクロルエタン
  • テトラヒドロフラン
  • トルエン
  • ノルマルヘキサン
  • 1-ブタノール
  • 2-ブタノール
  • メタノール
  • メチルエチルケトン
  • メチルシクロヘキサノール
  • メチルシクロヘキサノン
  • メチル-ノルマル-ブチルケトン
  • テトラヒドロフラン

第三種有機溶剤(有機溶剤中毒予防規則)

  • ガソリン
  • コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)
  • 石油エーテル
  • 石油ナフサ
  • 石油ベンジン
  • テレビン油
  • ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット及びミネラルターペンを含む)

 

特別有機溶剤(特定化学物質障害予防規則)

  • エチルベンゼン
  • クロロホルム
  • 四塩化炭素
  • 1.4-ジオキサン
  • 1.2-ジクロロエタン(別名:二塩化エチレン)
  • 1.2-ジクロロプロパン
  • ジクロロメタン(別名:二塩化メチレン)
  • スチレン
  • 1.1.2.2-テトラクロロエタン(別名:四塩化アセチレン)
  • テトラクロロエチレン(別名:パークロルエチレン)
  • トリクロロエチレン
  • メチルイソブチルケトン

 

 

これらを扱う際は特に注意が必要です。

『有機溶剤中毒予防規則に関する記事』

>有機溶剤中毒予防規則について

『特定化学物質障害予防規則に関する記事』

>特定化学物質障害予防規則について① 

 

 

 

他にも、沸点や、極性、用途によった分類方法があります。

分からない用語は是非用語解説なども参考にしてみてください!

用語解説

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