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有機溶剤
2025.11.30
MIBKとは?用途や有害性、関連法令などをわかりやすく解説
MIBKについて、化学の知識がない方にでもわかるように、丁寧に解説します。
目次
MIBKとは?
MIBKとは、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone)の略で、ケトン類に分類される有機溶剤の一つです。4-メチル-2-ペンタノンやイソプロピルアセトンとも呼びます。常温では無色透明の液体で特有の臭気があります。水にはほとんど溶けませんが、アセトンやエタノール、トルエンなどの有機溶剤にはよく混ざります。
化学式はC6H12Oです。炭素(C)が6個、水素(H)が12個、酸素(O)が1個から成ります。構造式は下の図の通りです。

分子中にカルボニル基と隣接水素原子を持つため化学的反応性に富みます。たとえば、水素で接触還元すると4-メチル-2-ペンタノール(メチルイソブチルカルビノール)が得られます。クロム酸酸化などの強力な酸化剤によって酸化させると、酢酸やイソ酪酸、イソ吉草酸などを生じます。
MIBKは、工業的には2分子のアセトンを縮合して、中間体としてジアセトンアルコールを生成させ、これを脱水してメシチルオキシドとし、さらに水素化することで製造します。
MIBKの主な特徴は以下の通りです。
| 項目 | 概要 |
| 名称 | メチルイソブチルケトン |
| 別称 | 4-メチル-2-ペンタノン、MIBK |
| CAS番号 | 108-10-1 |
| 化学式 | C6H12O |
| 引火点(℃) | 17℃ |
| 発火点(℃) | 448℃ |
| 沸点(℃) | 116℃ |
| 比重 | 0.802(20/4℃) |
| 有機溶剤中毒予防規則(有機則) | 非該当 |
| 特定化学物質障害予防規則(特化則) | 特別有機溶剤等 |
| PRTR制度(PRTR法) | 第1種指定化学物質 |
| 消防法 | 危険物第4類第1石油類非水溶性液体 |
| 毒物及び劇物取締法(毒劇法) | 非該当 |
| 悪臭防止法 | 指定物質 |
| 船舶安全法 | 中引火性液体類 |
| PRTR制度(PRTR法) | 第1種指定化学物質 |
ケトン類とは?
ケトン類とは、分子内にカルボニル基(C=O)を持つ有機化合物です。ケトン類の有機溶剤としては、MIBKの他にアセトンやMEK(メチルエチルケトン)、DIBK(ジイソブチルケトン)などがあります。
ケトン類の有機溶剤は、油と樹脂のどちらも溶解(洗浄)できる性質のものが多く、炭化水素類によく溶けるため希釈剤としても使います。ただし、有害性が高いものが多く、有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)で規制されているものもあります。
MIBKの利用
MIBKは、工業的には安定な中沸点溶剤や、塗料用、各種合成樹脂用溶剤として大量に使われています。
その他、ピレトリンやペニシリンなどの抽出用溶剤、核分裂物質からのウラン溶解回収用溶剤、脱油剤、脱ロウ溶剤、ニトロセルロース(硝化綿)やエチルセルロース用の溶剤、特殊金属用抽出溶剤としても使われています。
身近な例だと、インキ、接着剤、不凍液、磁気テープのコーティング剤などとしても利用されています。
MIBKの有害性
MIBKは有害性が強く、吸い込んだり、皮膚や粘膜に付着したり、飲んでしまったりして体内に取り込まれると、めまいや吐き気、頭痛、喉の痛み、下痢、意識喪失、脱力感、食欲不審など、中枢神経や肺、皮膚、粘膜、消化器系、肝臓、腎臓に障害を起こし、がんになる恐れもあります。
実際に、下記のようにMIBKを含む有機溶剤による中毒事故も発生しています。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト 汚水処理槽内部を塗装中、有機溶剤中毒
こうした高い有害性により、MIBKは特化則の特別有機溶剤等に指定されています。
また、MIBKは臭いが強いため、悪臭防止法でも規制されています。
MIBKに関連する法令
MIBKは下記法令に該当するため、取り扱いには注意が必要です。
- 特定化学物質障害予防規則(特化則)…特別有機溶剤等
- 消防法…危険物第4類第1石油類非水溶性液体
- 悪臭防止法…指定物質
- 化学物質排出把握管理促進法…PRTR制度第1種指定化学物質
- 海洋汚染防止法…施工例別表第1有害液体物質:Z類
- 船舶安全法…中引火性液体類
特化則とMIBK
MIBKは、2014年までは有機溶剤中毒予防規則の第2種有機溶剤でしたが、発がん性があることから、より規制の厳しい特化則の特別有機溶剤等に移行しました。
MIBKを取り扱う場合には、年に2回の特定化学物質健康診断、作業環境測定の実施、健康診断や作業記録、作業環境記録の30年間保存などの特化則の細かな規定に従う必要があります。違反した場合は罰則もあるので注意してください。
特化則については、別記事「特定化学物質障害予防規則(特化則)とは?対象の有機溶剤などもわかりやすく解説」で詳しく説明しておりますので、併せてご覧ください。
PRTR制度とMIBK
MIBKは、環境中に放出されると分解されにくく、環境汚染の原因物質になるため、PRTR制度の第1種指定化学物質に指定されています。
PRTR制度(PRTR法)とは、化学物質から環境を保護することを目的とした制度で、化学物質排出把握管理促進法によって定められています。
このためMIBKを一定以上取り扱う事業者は、化学物質の排出量や移動量を記録し、都道府県を通して経済産業省へ届け出なければなりません。
制度の詳細は別記事「PRTR制度(PRTR)とは対象の有機溶剤などもわかりやすく解説します」をお読みください。
脱MIBKの流れ
MIBKは、有機溶剤として優れた性質を持っていますが、毒性が高く、取り扱うには各種法令を守る必要があります。
そのため、MIBKを使ってきた事業者の間では、少しでも安全性が高いものへの代替が進んでいます。

そるぶ
MIBKには、依然として代替できる物質がなく、MIBKでなければならない用途もあるよ。
その場合はSDSを読み、しっかり管理し、安全に配慮して使おうね!
三協化学のMIBK関連製品
弊社のMIBK関連製品には以下のようなものがあります。
MIBKの代替品としては、以下のような商品があります。
| 商品名 | 特徴 |
| ファインソルブE |
|
| ファインソルブCY-P |
|
対象の部材など、条件によっては上記以外の製品の製品が適している場合があります。MIBK代替品をお探しの方や、MIBKに関する疑問質問は、下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。
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