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有機溶剤
2025.06.12
メチレンクロライド(ジクロロメタン)とは?用途、毒性などをわかりやすく解説
メチレンクロライド(ジクロロメタン)について、化学の知識がない方でもご理解いただけるように丁寧にわかりやすく解説します。
目次
メチレンクロライドとは?
メチレンクロライドとは、塩素系有機溶剤の一つでジクロロメタンやジクロルメタン、メチレンジクライド、塩化メチレン、二塩化メチレンなどとも呼ばれ、メチクロ、塩メチ、DCM、MDCなどと略される場合も多いです。
常温で液体、無色透明です。特徴的な臭気があります。有機溶剤としては珍しく不燃性です。メタンの塩素化合物の中では最も安定しています。
塩素系有機溶剤とは、炭化水素類の水素を塩素で置き換えたものです。溶解力が強く洗浄性に優れ、乾燥が早く、燃えにくいというメリットがありますが、毒性が強いため各種法令により規制されているものが多いです。代表的な塩素系有機溶剤としては、メチレンクロライドの他に、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどがあります。※クロロとは塩素のことです
※有機溶剤については、「有機溶剤とは?わかりやすく解説します」で丁寧に解説しています。
メチレンクロライドの化学式はCH2Cl2です。炭素(C)が1個、水素(H)が2個、塩素(Cl)が2個でできています。
メチレンクロライドの主な特徴は以下の通りです。
項目 | 概要 |
名称 | メチレンクロライド |
別称 | ジクロロメタン、塩化メチレン、メチレンジクロライド、二塩化メチレン |
CAS番号 | 75-09-2 |
化学式 | CH2Cl2 |
引火点(℃) | なし |
発火点(℃) | 662℃ |
沸点(℃) | 39.8℃ |
比重 | 1.3255(20/4℃) |
有機溶剤中毒予防規則(有機則) | 非該当 |
特定化学物質障害予防規則(特化則) | 特別有機溶剤等 |
PRTR制度(PRTR法) | 第1種指定化学物質 |
皮膚等障害化学物質 | 該当 |
消防法 | 非該当 |
毒物及び劇物取締法(毒劇法) | 非該当 |
悪臭防止法 | 非該当 |
船舶安全法 | 毒物類・毒物 |
大気汚染防止法 | 有害大気汚染物質 優先取組物質 |
水質汚濁防止法 | 有害物質 |
土壌汚染対策法 | 特定有害物質 |
メチレンクロライドは、水には混ざりませんが、油に対しても樹脂に対しても強力な溶解力を持ち、乾燥も早いです。さらに燃えにくいため消防法の規制を受けません。
一方で、環境負荷が大きいとしてPRTR制度で指定されているほか、発がん性があるとして特化則でも規制されています。
メチレンクロライドの利用
メチレンクロライドは、溶解力、脱脂力が強く、乾燥性が高く、かつ燃えにくい溶剤のため、洗浄分野で特に利用されています。
たとえば、医薬・農薬の中間体の抽出溶媒や、アクリル樹脂の溶着、塗膜の剥離剤、金属洗浄、皮革の洗浄、プリント基板洗浄、接着剤洗浄、ウレタン発泡助剤、ポリカーボネート樹脂などの製造用の溶剤として使われています。
メチレンクロライドの毒性
メチレンクロライドは、呼吸や皮膚を介して体内に取り込まれると、胆管がんなどの発がん性、肝機能障害、精子減少などの生殖毒性、眼に対する強い刺激、皮膚刺激などが認められています。
このため、メチレンクロライドは、発がん性がある物質を規制する特定化学物質障害予防規則(特化則)上の特別有機溶剤等に指定されています。
メチレンクロライドは、有機溶剤中毒予防規則(有機則)で規制されていましたが、毒性が強いため、より規制が厳しい特化則に2014年に移行しました。
メチレンクロライドによる事故の事例
大阪市のある印刷会社では、オフセット校正印刷作業の印刷機のローラーとブランケットの洗浄にメチレンクロライドを含む有機溶剤を使っていました。この作業に従事した作業者70人のうち18人が胆管がんを発症、うち9人が死亡しました。
この作業場では換気が著しく不足し、有効な防毒マスクも使っていませんでした。
特化則とメチレンクロライド
メチレンクロライドは2014年までは、有機溶剤中毒予防規則上の第2種有機溶剤でしたが、上記の事故のように発がん性があることから、より規制の厳しい特定化学物質障害予防規則(特化則)上の特別有機溶剤に移行しました。
メチレンクロライドを取り扱う際は、年に2回の特定化学物質健康診断、作業環境測定の実施、健康診断や作業記録、作業環境記録の30年間保存などの特化則の細かな規定に従う必要があります。違反した場合は罰則もあるので注意してください。
特化則については、別記事「特定化学物質障害予防規則(特化則)とは?対象の有機溶剤などもわかりやすく解説」で詳しく説明しておりますので、併せてご覧ください。
PRTR制度とメチレンクロライド
メチレンクロライドはPRTR制度の第1種指定化学物質に指定されています。
PRTR制度(PRTR法)とは、化学物質から環境を保護することを目的とした制度で、化学物質排出把握管理促進法によって定められています。
同制度の特定第1種指定化学物質、第1種指定化学物質を一定量以上取り扱う事業者には、化学物質の排出量や移動量を記録し、都道府県を通して経済産業省へ届け出なければいけません。
制度の詳細は別記事「PRTR制度(PRTR法)とは?対象の有機溶剤などもわかりやすく解説します」をお読みください。
脱メチレンクロライドの流れ
メチレンクロライドは有機溶剤として優れた性質を持っていますが、毒性があり、使用にあたっては各種法令を守る必要があります。
そのため、メチレンクロライドを使ってきた事業者では、少しでも安全性が高いものへの代替が進んでいます。

そるぶ
メチレンクロライドには、依然として代替できる物質がなく、メチレンクロライドでなければならない用途もあるよ。
その場合はSDSを読み、しっかり管理し、安全に配慮して使おうね!
三協化学のメチレンクロライド関連製品
弊社のメチレンクロライド関連製品には以下のようなものがあります。
メチレンクロライド(ジクロロメタン、二塩化メチレン、メチクロ)
代替品としては、用途別に以下のような商品があります。
用途 | 商品名 | 特徴 |
脱脂 | 脱脂用メチレンクロライド、シンナー代替 メタルクリーナー#770 | 環境対応型の炭化水素系脱脂洗浄剤。洗浄力と乾燥性のバランスに優れる。浸漬やウエス拭きなどで使用可能 |
樹脂溶解 | 樹脂溶解用アセトン、メチレンクロライド代替 ファインソルブE | 環境対応型樹脂溶解剤。樹脂溶解力、乾燥性に優れる。浸漬やウエス拭きなどで使用可能 |
樹脂溶解用トルエン、アセトン代替 レジーナMG | 環境対応型樹脂溶解剤。溶解力と乾燥性が高い。 | |
剥離 | ジクロロメタン(塩化メチレン)代替 強力剥離剤 ゾルカスEP-110 | 環境対応型強力剥離剤。エポキシやウレタンなどの強固な樹脂の剥離が可能。常温浸漬で強力な剥離効果を発揮、加温や超音波洗浄機と組み合わせると剥離力が向上する |
メチレンクロライドやメチレンクロライド代替品に関する疑問質問や、お求めの方は下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。
メチレンクロライドに関する質問
※2024年11月20日更新
以前、ページのコメントに寄せられた疑問・質問とその回答をご紹介します。
(※一部編集・抜粋しております)
質問No.01~
※「▼」をクリックすると質問が表示されます。
容器や装置に付着したメチクロは水洗すると安全(容器や装置が再利用できる)と思っていました。メチクロは水に殆ど溶けないので、容器等(鉄製、樹脂製)の表面に残留していると考えられますが、残留成分の測定法が有りましたら教えてください。
若い時メチクロ製造工場に勤務していた事があります。当時も毒性があって危険であることは承知していました。工業試験所等で試験して貰えるでしょうか?
メチレンクロライドは乾燥してしまえばその成分はすべて揮発してしまいますので、表面に残ることはありません。
今年に入ってから新しい仕事で機会の洗浄にメチクロを使ってます。知識不足もあり、最近になって発がん性があることに気付きビックリしてます。
一応薄手のゴム手袋はしてますが破れて皮膚に付着したことは数回あります。直ぐに乾燥するし洗いに行っても効果あるのでしょうか?
発がん性に関しては、経口および吸入による摂取よって発生する区分ですので、皮膚についた場合は速やかに洗浄していただき、使用される防具は塩素系溶剤に強い手袋や防毒マスクを使用してください。
長時間吸引し続けると、EDに、なるとは、本当でしょうか?
弊社にはそのようなデータがございませんので分かりません。
また、本記事にも記載した通り、メチレンクロライドは発がん性も高く、吸引などによって胆管がんを引き起こすおそれがございますので、EDになるならない以前に非常に危険でございます。取り扱いには十分お気をつけください。
板金も(の(seccかな?)で、塗装前にメチクロで洗浄した後、塗装して錆が発生することってあるのか、ある場合は原因は何か教えてください。
メチレンクロライド(メチクロ)で洗浄した後、乾いてしまえばそこには何も残りませんのでメチクロが悪さをする可能性はほぼありません。(メチクロは乾燥性もとてもはやい)
塗料で塗り残しがあったり、あるいは塗装前の洗浄で汚れが落ちきっておらず、塗料がしっかり密着しなかった場合などは錆が起こる可能性があります。
メチレンクロライドを使って製品の洗浄を行なっているのですが、作業者は防毒マスクも手袋もつけていません。長い時間嗅いでいるわけではないですが、それでも影響はあるものなのでしょうか?
作業場は屋内で、製品を乾燥させる時は換気扇を回しているようなのですが、作業場には芳香臭が充満しています。特に説明を受けていないので分からなかったのですが、吸引は発がんのリスクがあると知り、驚いています。作業者も大丈夫なのか心配です。
そのような作業環境ですと、労働基準監督署が入る案件となるおそれがございます。
影響は個人差や環境差がございますので、一概に申し上げることはできませんが、大事になってからでは取り返しがつきませんので、弊社といたしましては速やかに保護具の着用、換気装置の徹底(天井付近についている、一般家庭にもあるような換気扇ではなく)など、特定化学物質障害予防規則に準拠したご使用方法をお願い致します。
製造業で塩化メチレンを使用している物です。以下の場合、塩化メチレンは水に溶けるのでしょうか?
工場からの排水に塩化メチレンが含まれている事に気付き発生源を調査した所、建屋内の手洗い台にある蛇口(市水、凍結防止で微開状態)にたどり付きました。
蛇口から出た水の塩化メチレン濃度は①塩化メチレン未使用状態では0ppm、②蛇口を全開にして勢いよく流すと0.02ppm、③ぽたぽたと蛇口から滴下させると0.3~0.1ppmで、②と③時の作業環境濃度は15ppm程度です。
上記の様子から、蛇口から放水された水がサンプル瓶に入るまでの間に空気中の塩化メチレンが溶け込んでいる可能性があると考えています。
しかし、塩化メチレンの溶解度が1.3g/Lとは言え、この様な短い時間でも塩化メチレンは0.1ppmオーダーで水に溶けるのでしょうか?または、冬場に市水と接触した事で液化しているのでしょうか?
サンプル瓶の中にあらかじめ塩化メチレンの成分が入っていないでしょうか。作業場の空気が入った状態のサンプル瓶であれば、塩化メチレンを多く含む可能性があると思います。
手洗い場から出る塩化メチレンの排出量と、工場排水から出る塩化メチレンの量とがつり合いが取れているかも確認してください。
メチレンクロライドを扱っています。私は少量をドラム缶から出して使用しているのですが、ドラム缶の栓を少し開けた際に勢いよく「プシュッ」っと中で揮発していたと思われるメチレンクロライドが出てきたので一瞬吸引してしまいました。その時は防毒マスクをつけておらず、一日経っても喉から胃にかけてに違和感が残ってますが、影響は続くのでしょうか。
吸引後、栓を閉じてすぐに離れうがい等をしたのですが、一日経っても喉から胃にかけてに違和感が残ってます。屋内ですが窓を開ける、換気扇を回すなどはやっていました。
一瞬だけ吸引してしまったとはいえ喉の違和感等は後遺症みたいなものなのでしょうか?徐々に違和感が無くなっていくものでしょうか?他にも何か影響が出るでしょうか?
溶剤をどの程度摂取するとどのような症状が出るかは個人差がございます。そのためかかりつけのお医者様にご相談ください。
弊社では医師免許がないため、診断めいたことをすることが法律上できません。何卒ご容赦下さいませ。
メチレンクロライド80〜90%含有の剥離剤を、以下の頻度で使用だと健康被害が起きる可能性はありますか?
外壁塗装で塗装不良が発生し、外壁塗装メーカーより剥離し修繕しますとのことでメチレンクロライド80〜90%含有の剥離剤で塗膜の剥離を行いました。剥離期間は1ヶ月です。家族は基本、閉め切った家の中にいましたがエアコンは使用していました。雨の日も剥離作業を実施しています。
剥離したものは地面に放置、剥離状態を確認する為、10回程度、家全体の剥離状態の確認をしています。その際、マスクはしておらず少なからず吸引したと思われます。
例えば、1缶のビールを飲んで酔っ払って気持ちが悪くなってしまう人もいれば、普段と何も変わらず、5缶、6缶と飲み続けられる人もいます。
同様に、溶剤も人体への影響に個人差があり、一概に申し上げることができないため、かかりつけのお医者様へご相談願います。
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