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化学規制

2026.07.02

中国危険化学品安全法とは?日本企業への影響を中心にわかりやすく解説

中国初の危険化学品の安全管理に特化した法律である中華人民共和国危険化学品安全法(以下、危険化学品安全法)が、2026年5月1日に施行されました。具体的な規制内容や罰則、日本企業への影響を中心にわかりやすく解説します。

危険化学品安全法とは?

中国危険化学品安全法とは危険化学品安全法とは、中国で化学品を製造、輸入、販売、使用、保管、輸送する場合の安全管理を体系的に定めた法律です。危険化学品による事故を予防し、人民の生命や健康、財産、環境を保護することを目的としています。

これまでも中国では、危険化学品安全管理条例に基づいて、危険化学品は管理されてきましたが、危険化学品安全法の施行により、条例から法律へと、規制レベルが引き上げられ、より厳格に管理されるようになりました

同法の構成は、総則、規格と配置、生産と貯蔵安全、使用安全、経営安全、運輸安全、危険化学品登記、事故応急救援、法律責任、付則の全10章となっています。その対象はSDSやラベルだけにとどまらず、危険化学品の製造から保管、販売、使用、輸送、事故対応まで一元的に定めています。

危険化学品とは?

危険化学品とは、同法第3条によると、毒性や腐食性、爆発性、可燃性、燃焼促進性などを持ち、人の健康や施設、生態環境に有害な化学物質などのこととされています。該当する化学物質は、危険化学品目録に記載されています。なお、同目録は必要に応じて調整されるため、実務ではその都度最新版の目録を確認する必要があります

従来の規制から何が変わったのか?

危険化学品安全管理条例などの従来の規制との主な変更点は以下の通りです。

  • 企業の主体的責任の強化
  • 重大危険源の管理強化
  • 化学工業団地への入居義務化
  • SDSおよびラベル要件の変更
  • 安全評価報告に関する社会公開制度の導入
  • 従業員へのSDS情報の提供要求の追加
  • 輸送管理上の危険貨物との区別明確化
  • 登録免除規定の導入
  • 劇毒化学品・爆発物製造用危険化学品の管理強化
  • 罰則と法的責任の厳罰化

日本企業にも影響しやすい具体的な規制内容

危険化学品安全法では、危険化学品を取り扱う企業に対して、さまざまな管理義務を定めています。中国へ化学品を輸出したり、中国で化学品を取り扱う日本企業にも関係しやすい主な規制内容は以下の通りです。規制の内容

危険化学品従事者の教育

危険化学品を取り扱う事業者は、従事者に対して必要な教育を実施することが義務付けられています。

危険化学品の性質や適切な取り扱い方法、保護具の使用法、応急措置、緊急時の対応などを理解し、実際に事故などが起きたとき迅速に対応できるようにします。

安全評価報告書の公開

同法第39条では、危険化学品を製造・貯蔵する事業者は、中国政府が定める資格要件を満たす機関に委託して、自社の安全評価を3年に1回実施し、安全評価報告書を作成し、それを公開する義務があります。

SDSおよびラベルの管理

危険化学品の製造や輸入を行う事業者は、その製品の中国語の化学品安全データシート(SDS)を提供し、容器や包装に中国語の化学品安全ラベルを貼付または印刷、吊り下げなければなりません。なお、SDSとラベルは国家標準(GB)の要件を満たさなければなりません。また、取り扱う危険化学品に新たな危険有害性があることが判明した場合、直ちに公告し、SDSと安全ラベルを適時に改訂する必要があります。また、SDSまたは安全ラベルがない製品の販売は禁止です。

さらに、いかなる組織や個人も、危険化学品を購入するときに、製造企業や販売企業にその製品のSDSを請求して、危険有害性や防護措置、使用方法を確認する権利があります。

※中国語のSDSに関しては、別記事「中国語SDSとは?日本語SDSとの違いや作成委託の料金などを解説」で解説しておりますので、併せてお読みください。

危険化学品登録の免除規定

危険化学品の製造企業や輸入企業は、登記機関で登記手続きをする義務があります。しかし、同法第87条により、研究開発(R&D)や試作、試販の過程での低量、低放出、低曝露の危険化学品などは登記が免除されます。

危険化学品の輸送管理

危険物として管理される危険化学品を道路や水路で運ぶ場合は、同法や関連法令、行政規則を守る必要があります。危険化学品を道路輸送または水路輸送する場合、輸送事業者は関連する法令に基づき、必要な許可や届け出を行う必要があります。

また、危険化学品を輸送する事業者は、専任の安全生産管理担当者を配置することが義務付けられました。

ただし、適切な取り扱いを行えば、一般貨物として扱える危険化学品は、一般貨物として輸送できるようになりました。具体的な運用は、国務院運輸当局が別途定めるとされています。

化学工業団地(化工園区)の管理

化学企業に関連する支援業務を行う企業を除き、非化学企業は化学工業団地に進出することが禁止されました。また、化学工業団地では、3年に1回全体的な安全リスク評価を実施し、リスクの除去や低減、管理に関する対策を立てて、実施することが義務付けられました。

通報の奨励と報奨金

同法に違反する行為や事故につながりかねない危険性について、中国当局へ通報した者には、報奨金が与えられます。また、通報者は厳重に秘匿されるようになりました。

罰則

危険化学品安全法に違反した場合の罰則も定められています。

下記のいずれか該当する場合は、期限付きの是正を命じられ、10万人民元以下の罰金を課されることがあります。また期限内に是正しなかった場合は、さらに10万人民元以上20万人民元以下の罰金が課され、責任者には、2万人民元以上5万人民元以下の罰金が課されることがあります。重大な違反の場合は、生産停止や営業停止などの処分が課されることがあります

以下のいずれかに該当する場合は上記の罰則が課されることがあります
※クリックすると表が開きます。
  1. 危険化学品の製造企業または輸入企業が、中国語のSDSを提供していない。または危険化学品の包装に中国語の化学品安全ラベルを貼付・印刷・吊り下げていない。
  2. 危険化学品の製造企業または輸入企業が提供する中国語SDSや、安全ラベルが、製造・輸入した危険化学品と異なっている。またSDSと安全ラベルが中国の国家基準に適合していない場合。
  3. 危険化学品に新たな危険特性が判明していながら、製造企業または輸入企業が、直ちに公告せず、SDSと安全ラベルを適時改訂しない。
  4. 危険化学品製造企業の従事者が、中国政府の定める学歴要件を満たさない。安全生産に関する教育と研修を受けていない。試験に合格せずに業務に従事している。
  5. 危険化学品の包装資材や容器の材質、包装形態、規格、方法、重量が、その化学品の性質と用途に適していない。
  6. 危険化学品を製造、保管、使用する企業が、作業場所と安全施設・設備に明確な安全警告標識を設置していない。作業場所に警報装置を設置していない。または設置していても正常に使用可能な状態を維持していない。
  7. 危険化学品の専用貯蔵場所に専任管理者を置いていない。劇毒化学品や重大危険源となる物質に対して、二人体制での受領と発送、保管を実施していない。または、記録の保存期間が3年未満。
  8. 危険化学品の入出庫時の照合・登録制度を確立していない。
  9. 危険化学品の専用保管場所に明確な表示標識を設置していない。
  10. 研究開発機関が、ラボスケール、パイロットスケール、工業化試験を経ていない新しいプロセスや技術を直接工業化生産に用いた。または、技術譲渡の際に安全性評価報告書や関連資料を提供しなかった。
  11. 危険化学品を使用する事業者が、作業員にSDSや安全ラベルを提供していない。または危険化学品の正しい使い方や緊急時の措置を作業者に告知していない。
  12. 危険化学品の製造企業または販売企業は、SDSや安全ラベルのない危険化学品を取り扱っている。または、SDSや安全ラベルを無断で改ざんした。
  13. 危険化学品の製造企業または輸入企業が、危険化学品登録をしていない。または、危険化学品に新たな危険特性が判明したり、登録内容に変更が生じたりしたにもかかわらず、登録内容の変更手続きを怠った。

日本企業が特に注意すべきポイント

日本企業が特に気をつけるべき点は以下の通りです

  • 輸出品が危険化学品目録に該当するか
  • 中国語SDSがGB規格に対応しているか
  • 中国語ラベルが必要事項を満たしているか
  • 輸入者側で危険化学品登記が必要か
  • 保管、輸送、販売時の許可や届出が必要か
  • 新たな危険有害性が判明した場合のSDS改訂体制があるか

危険化学品安全法制定の背景

危険化学品安全法が制定された背景には、化学品を原因とする重大な爆発事故や化学品事故が近年相次いだことがあります。

中国では、危険化学品の製造、貯蔵、輸送、使用に関する事故がたびたび発生してきました。そのたびに、企業の安全管理体制、危険源の把握、設備保全、作業手順、行政による監督体制などに課題があることが指摘されてきました。

特に、2015年天津浜海新区倉庫爆発事故や、2019年の江蘇省化学工場爆発事故は、中国の危険化学品管理制度を見直す大きな契機となりました。特に江蘇省化学工場爆発事故後には、危険化学品安全法の起草作業が加速したとされています。

事故名 発生日時 概要
2015年天津浜海新区倉庫爆発事故 2015年8月12日 中国天津市にある危険物倉庫で発生した爆発事故。硝酸セルロースの保湿剤が気化して爆発した。死者165人、負傷者798人、行方不明者8人。
江蘇省化学工場爆発事故 2019年3月21日 江蘇省塩城市響水県の陳家港化学工業パーク内にある江蘇天嘉宜化工有限公司で発生した爆発事故。死者78人、負傷者716人。
浙江省温嶺市タンクローリー爆発事故 2020年6月13日 浙江省温嶺市の高速道路上で、液化ガスを運んでいたタンクローリーが爆発。死者19人、負傷者170人以上。
遼寧省盤錦市・浩業化工爆発火災事故 2023年1月15日 盤錦浩業化工のアルキル化装置関連設備で、帯圧密封作業中に爆発火災が発生。死者13人、負傷者35人。
寧夏銀川市ガス爆発事故 2023年6月21日 串焼きなどを提供するバーベーキュー店で起きたガス爆発。死者31人、負傷者7人。

これらの事故では、危険化学品の保管場所、作業手順、設備の点検・保全、輸送管理、緊急時対応、行政による監督など、複数の管理不備が重なった結果、大きな被害につながった点が共通していました。

中国では危険化学品の製造、貯蔵、使用、販売、輸送を個別に管理するだけでなく、危険化学品のライフサイクル全体を通じて安全管理を強化する必要性が高まりました。

危険化学品安全法は、こうした重大事故の教訓を踏まえ、事業者の安全管理責任を明確にし、危険化学品による事故を未然に防ぐために制定された法律といえます。

中国での危険化学品の取り扱いと現地製造について

危険化学品安全法の他にも、中国の化学品に関する法令は、複雑で難解なものが多く、日本企業が自社だけで対応すると、手間と費用がかかります

三協化学では、中国国内における危険化学品の輸送・保管について、現地法令に基づいた適切な管理を徹底しています。

また、中国広東省東莞市に製造拠点を設けており、現地から製品を供給できるため、日本から輸出する場合に比べて、輸送コストや手続きの負担を抑えやすい点も特長です。同拠点では、一斗缶やドラム缶の荷姿で、単体有機溶剤、洗浄剤、剥離剤、シンナー類などを製造しています。

なお、界面活性剤や添加剤を配合する作業には対応していないため、塗料や接着剤の製造には対応しておりません。

危険化学品安全法をはじめとする中国の化学品関連規制についてのご相談や、中国現地製造品の詳細については、下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせバナー 詳しい内容やご質問・ご相談がございましたらお気軽にお問い合わせください

まとめ

危険化学品安全法は、中国における危険化学品の安全管理を、製造・輸入・販売・使用・保管・輸送・事故対応まで一体的に規定した重要な法律です。従来の条例による管理から法律レベルへと引き上げられたことで、企業にはこれまで以上に主体的な安全管理が求められるようになりました。

中国へ化学品を輸出する企業や、中国国内で化学品を取り扱う企業は、自社製品が危険化学品に該当するかを確認したうえで、SDS・ラベル、危険化学品登記、保管・輸送時の管理体制などを見直すことが大切です。関連する規則や運用基準は今後も整備・変更される可能性があるため、最新情報を確認しながら、早めに対応を進めていくことが重要です。

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