ろうそくのお話

木枯らしが吹いて、それが木々にしがみついている枯葉を落とすようになると、街角では救世軍の社会鍋が登場します。

先日毎年恒例のキリスト教徒ではない家庭のクリスマスケーキを予約致しました。

今年もアッという間に1年が過ぎようとしています。(敢えてアッを半角にすることでより早さを表現しました)

光陰矢の如し。

 

ディケンズのクリスマスキャロル(1843年発刊)で、主人公のスクルージが、7年前に亡くなった共同経営者マーレイ老人の亡霊の訪問を受ける場面でもろうそくの火(まだエジソンの電球は無かった)が印象的に登場します。本日はそんなろうそくのお話です。

 

『ロウソクの科学』

著者:マイケル・ファラデー(Michael Faraday)

翻訳:山形浩生

https://www.genpaku.org/candle01/candlej0.html

 

ファラデーが1847~1848年、1860~1861年にロンドン王立学院でおこなった子供向けのクリスマス連続講義『ロウソクの科学』にまず触れていきたいと思います。

上のURLで山形さんの翻訳では、ファラデーの講義6回全文が読めます。

 

 

ロウソクは、昔は動物や植物の油や蜂蜜、はたまたアイルランドの沼から採れるパラフィンで作られていました。現代は石油から作られています。

 

ファラデーが講義にて

「日本からもってきた物質があります。なんせ最近われわれは、あの僻地の国の入り口を、無理矢理こじあけて【三協注:ペリーの黒船の事】やりましたからな、一種のワックスですねえ。そしてこれは、ロウソク生産の新しい材料になるものです。」

と少しおどけた表現で述べた日本のロウソクは、奈良時代に仏教と共に伝わった際蜂蜜でできているものでした。それが室町時代以降はハゼノキの実から作られるようになります。現代の和ロウソクも同じ原料です。

 

ロウソクをしばらく燃やして、真っ先に気がつくのは、とってもきれいなくぼみができていることです。空気がロウソクに近づくと、ロウソクの熱がつくる気流のせいで、その空気は上に動きます。これで近づいてくる空気がワックスなり脂肪なり燃料なりの側面を冷やして、はしっこのほうは、中の部分よりずっと冷たくなることになるんですね。炎は、消えるところまでずっと芯の下に向かってやってくるので、中の部分はとけるけれど、外の部分はとけないんです。もし気流を一方向だけにすると、くぼみがゆがんでしまって、液体もどんどん流れ出します。世界を一つにしている重力の力が、この液体を水平に保つから、もしくぼみが水平でなければ、液体は当然ドボドボ流れ出すってことです。つまりですね、このくぼみは、みごとに一様な空気の流れが、あらゆる方向からやってきて形成されて、そしてそれがロウソクの外側を冷やしておくというわけですな。

このくぼみをつくれない燃料は、どれもロウソクには使えません。

 

ロウソクが芯にそってすぐに下まで燃えてしまわないのは、ただ一つ、とけたロウが炎を消してしまうから。

 

 

ファラデーが驚いたのは、和ろうそくです。

このロウソクは日本からのもので、おそらくは以前の講義で触れた物質でできているはずです。ごらんのとおり、フランスのロウソクよりずっと手のこんだ装飾がしてあって、たぶんこの様子から判断すると、装飾用のロウソクなんでしょうね。こいつには、非常にかわったところがあります――芯が空洞になってるんですよ――これはアルガンがランプに導入して、実に価値の高いものとなったあのすばらしい特徴と同じですな。ちなみに東洋からこんなプレゼントを受け取る方に申し上げておくと、これとか、これに似た物質はだんだん変化してきて、表面がだんだんどんより濁った外見になってきます。でもきれいな布か、絹のハンカチで表面をこすってやって、表面にこびりついたものというか、かたまったものを磨いてやると、すぐにもとの美しい状態に戻ります。これで美しい色彩が戻ってきます。ロウソクの一本をそうやって磨いてやりました。磨いたのと、磨いていないのとでちがいがわかるでしょう。磨いてないほうも、同じようにすればすぐに戻ります。あと見てほしいのが、この日本からの型どりロウソクは、世界のこの近辺の型どりロウソクよりも、きつい感じの円錐になってるのも見てください。

 

和ろうそく

このロウソクの芯は通常よりかなり太くなっています。

芯の真ん中に空洞があり、そこには空気が入っているのです。

 

この空洞は、い草の髄から採れる燈芯を竹ひごに和紙と巻いていき、木型で蝋を固めた後に竹ひごを抜くとできるものです。

この空洞芯の場合、ロウソクの胴体部分を空気が流れ、芯の外側からだけではなく内側からも酸素が供給されます。

この酸素の流れが炎を揺らめかせるため、和ろうそくの炎は大きく印象深いものになるのです。

 

この構造・材質は定期的に芯の燃えがらを切る必要があるという副産物も生んでいます。

 

 

 

 

 

 

ところが、なんと洋ロウソクでも芯切りがあったのです。

Wick(芯)切、アマゾンで$10-

正しいキャンドルのともし方と言うページがありました。

 

Each time you want to burn your candle, start by trimming the wick to between 1/8 and 1/4 inches long. You can use scissors, nail clippers (that’s my personal favorite), or a specialized wick trimmer, but no matter what you do, always trim.

蝋燭をともす時は、3mmから6mm位に芯をハサミでも爪切りでも専用トリマーなんでもいいからとにかくいつも灯をともす前に芯を切ることが大事。

 

『You’ve been burning candles wrong your whole life』

https://www.thisisinsider.com/right-way-to-burn-a-candle-2016-11

 

ですがこれはガラス瓶に入っているアロマ・ロウソク(英語で言うならAroma candle)の場合です。

このページでは、芯切せずに上手に燃やさないと、不完全燃焼ガスがガラスの内側を汚すと言っております。

それと7.5cm~10cmの太っとい直径の場合には複数芯でないと、1本芯では蝋を溶かすエネルギーが出ないので絶対買わないようにとアドバイスしています。

 

 

普段私たちが使う、世界的にも大手の日本の某地名のついたローソクの芯は綿糸ですが、切る必要なく炎心部で燃え尽きます。

小地谷縮の雪晒しは雪に紫外線が反応することにより発生したオゾンによって殺菌、漂白しますが、〈白蝋〉とは〈晒し蝋〉ともよばれ、1ケ月間、日光に当てその紫外線で色素を破壊して漂白します。

 

 

宇宙でロウソクに火をつけたらどうなるか

余談になりますが、宇宙でロウソクを燃やしたらどうなるかの実験結果をみつけました。

国際宇宙ステーションのような無重力空間(正確には微小重力空間)でロウソクに火を点けると、右の写真のようになります。

 

まあるい青い炎です。

真中に見える縦筋が芯です。

この実験はNASAが1996年、今はもうなき宇宙ステーションミールにて行ったもので、右記写真もNASA様のものです。

 

地上でのロウソクの灯はこの記事の上の方に写真を掲載しましたが、

縦長でまるみを帯びた細長い三角形のようなものをイメージします。

これは炎のまわりに上昇気流が発生し、炎の下から酸素が提供されているためです。

ところが微小重力空間では上昇気流は発生しません。そのためまあるい炎になるのです。

 

同時に、供給される酸素量は上昇気流の助っ人があった方が圧倒的に多いため、上昇気流のない宇宙での炎は地上での炎に比べ温度も低く、また色も薄暗い青色になるのです。

 

 

 

仏教徒ですが、皆様メリー・クリスマス! そしてハッピー・ニューイヤー!おわり

 

 

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