車のヘッドライトの黄ばみ問題
昔、車のヘッドライトのカバーがガラス製だった時代には無かったことですが、今はガラスに代わり「ポリカーボネート」という樹脂製がメインです。
ガラスのように割れないのが最大の利点ですが、紫外線によって黄色にくすむという問題もあります。特に保護膜がなくなってくる2~3年目以降に顕著にその黄ばみは現れます。
紫外線に当たらぬよう、遮蔽された車庫や、駐車する向きで太陽光になるべく晒されないようにすることで、少しは黄ばみを防止できますが、日中の走行時にはどうしようもありません。
ライト自信からでる紫外線もあるので、紫外線の出ないLED電球に換えるべきという意見もあります。
もう一つ、「車は必ず手で洗車する」という方と、「洗車?したことないね!」という方には関係ありませんが、
機械での洗車をしますと、ナイロンブラシやウレタンリボンが高速回転して(昔より良くなったといえども)ボディーにもヘッドライトカバー表面にも傷がつきます。
洗車の傷と紫外線攻撃で、機動隊の盾にも使われるポリカーボネートには黄色のくすみができます。
たとえ欧州の高級車であろうとも、日本の大衆車であろうとも、起こるときは起こります。
この黄色いくすみを取る特集が某記事にあがっていたのですが、
弊社も取り扱うジメチルホルムアミド(略称:DMF)という薬品が使われるようです。
プラスチックを溶かすこの溶剤、ようは黄ばみを溶かしてしまおうというわけです。
このジメチルホルムアミド、本来は人工皮革、有機合成用の溶媒、触媒、ガス吸着剤、色素の溶剤が薬効です。
その某記事の中でご丁寧に、「個人には売りません」と書いてありましたが、弊社も同様、法人様へのみ販売をしている製品です。
他の記事では、某リップクリームで有名な会社が発売しておられる虫よけ剤なども、樹脂を溶かすことができるそうです。
虫よけ剤に12%(2016年からは30%)DEET(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)という忌避剤が入っており、それが樹脂を溶かすのです。
DEETについて
今回の本題は、このDEETを開発したアメリカの農務省のお話です。
第二次世界大戦が始まってから、各方面で様々なプロジェクトが始まりました。
●マンハッタン計画
原子爆弾を開発するため、アメリカ・イギリス・カナダが科学者を総動員し、製造した計画のこと
●語学のASTP (Army Specialized Training Program)
大戦中、アメリカ軍が世界各地に布陣される際、各地の言語が必要とされました。そのため様々な大学の協力を得て、言語学習が施されることとなったのですが、これがなかなか目覚ましい成果をあげるもので(実際にはそんなに特別なことはやっていない)、その後もこの時の言語教育法を「陸軍方式」などとよんで採用するところが多くありました。
●ペニシリン株の培養
農務省が進めた、傷病兵に投与するためのペニシリンの大量製造のこと
●DDT
伝染病が昆虫を介し蔓延するのを阻止するため、農務省はその阻止方法を開発するチームを軍と結成します。
このときの阻止方法が「DDT」です。これは何年も前にスイスで既に発見されているものでしたが、使用された例はそれまでありませんでした。
伝染性の発疹チフスや疫病を伝播するノミを殺すことを実証し、この知識を利用し、農務省と軍の昆虫学者は、致命的な発疹チフスにかかった数千人の米軍を救済するシステムを作り出し、最終的に世界中で約2500万人の人々を救うことになりました。
●DEET
ジャングル戦で、アメリカ陸軍が使用するためにアメリカ総務省の「サミュエル・ガルトラーフ」によって開発された虫よけ剤がDEET(ディート)です。
DEETは蚊やダニなどの虫の感覚を麻痺させることで、人が出す二酸化炭素や体温を感知させないように鈍らせます。
もともとは農場で農薬として試験され、1946年に軍用に、1957年にベトナムや東南アジアの民間でも使用され始めました。
「バグジュース」として知られているもとの形態では、DEET用の適用溶液は75%がDEETおよびエタノールから構成されていましたが、その後アメリカ軍と農務省によって新しい構成の忌避剤が開発されました。
DEET制限について
60年以上に亘り、DEETは虫忌避剤の中でも代表的なポジションにおりました。
世界で80億人を救ったという記事もありましたし、商業的にもトップクラスのロングセラーだと言えるでしょう。
しかし一部の方々はDEETの使用を拒否し、民間救済措置や植物忌避措置を代わりに使っています。代わりとはいえ、現在使用可能な植物ベースの虫忌避剤はほとんど、DEETよりも短期間しか効果がないのが現状です。
DEETは殺虫剤とは異なり、蚊やダニの触覚を麻痺させて吸血レベルを低下させる忌避剤ですので、人間に深刻な害を及ぼすことはないというのが一般的な考えです。
そのため、DEETを含む製品の販売を全面的に禁止するなどの対策をとっている国は現在ありません。
しかし人によってはアレルギー反応を起こしたり、肌荒れするケースもありますし、動物実験では連続的に大量摂取すると神経毒性が見られたという報告もあります。そのため、カナダにおいては小さな子供への使用制限を実施しています。
今後について
今も研究は続いており、最近では農業研究サービス(ARS)(アメリカ農務省の科学的な社内研究機関のうちの1部門で、農業問題の解決に焦点をあてています)の科学者たちが蚊やダニを跳ね返す天然化合物を発見しています(松の油から調製されたもの)。他にも、ダニやハエ、蚊やベッドバグ(ダニとベッドバグは似ていますが、ダニは8本足でベッドバグは6本足です。危険性はダニの方が高いです)に対して強い反撥性および長期持続性を有するココナッツオイル脂肪酸を特定しました。
ココナッツオイル化合物はDEETより良い虫忌避性を示しています。ココナッツオイル自体には忌避性はありませんが、ココナッツオイル由来の成分が血液を吸う虫に対して強い忌避性を持っているのです。カプセル化した際の野外試験では96時間(4日間)家畜に対するハエの攻撃を防ぐことができています。既知の天然忌避剤の中ではトップクラスの持続力です。
農業研究サービスはこの新技術の特許出願を申請し、ココナッツオイル脂肪酸から忌避剤を開発する商業会社と協力しています。
農業研究に投資された1ドルは経済的インパクトで20ドルになると言われており、世に必要なものを研究・開発し、特許をとって商業会社に作らせ販売する。いかにもアメリカ的です。
1862年にリンカーンが、今まで内務省の一部だった農務部門を省として「農務省」に格上げしましたが、ヘンリー・ヘルスワールという人物が1836年以降国務省の委員長として働いた結果実現できたものです。彼のレポート(新種・改良種の保管および配布のための倉庫設置依頼)などから、彼は「The Father of the Department of Agriculture.(米国農務省の父)」と呼ばれています。
先日のゴールデンゲート・ブリッジの塗装監督の例があったので、米農務省の求人募集のページを探しましたが、2015-2020 年に募集する(必要人材)はありましが、ペイのページは見つけられませんでしたが、前提資格は、大卒でした。
以上、おわり