桑港と書いてサンフランシスコと読むことくらいは、教養豊かな皆様には何の問題もないことだと思いますが、
同じくサンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジは、橋の色が金色ではないのに何故ゴールデンというかとといいますと、
橋の掛かっている湾の出口の名前がゴールデン・ゲート(黄金海峡、とある人が名付けました)だからと聞けば納得頂けるはず。
実際の橋は東京タワーと同じインターナショナル・オレンジ(赤と黄色の中間色で赤に近く鮮やかな朱色#F04A00)という色で塗られています。
宇宙・航空業界で使われている兄弟のインターナショナル・オレンジ#FF4F00 に比べ、赤色が強いです。
問題は、2017年2月27日のNYタイムズ、ジョナサン・ブルーム氏の記事によると今この橋が錆びているというのです。
著作権があるので、さわりだけ紹介します。
「サンフランシスコの有名なゴールデンゲートブリッジが霧に襲われている」と言う見出しで、
以前よりインターナショナル・オレンジの塗料がはげ落ちていると書いています。
ベイエリアで最も有名なランドマークは少し錆びています。
インターナショナル・オレンジの塗装がゴールデン・ゲート・ブリッジから剥がれており、その塗り直し作業は一晩では出来ません。
あなたがドバイ、ベルリン、トロントの人で、サンフランシスコを訪れると、ゴールデンゲートブリッジ見物に来ます。
“象徴といえば、あなたが見なければならないものですよね?” 観光客のアイリーン・リンゼイさんは語ります。
彼女は初めてですが、ユエー・リッチャーは以前にも来たことがあり「昔は、もっとよかったです」と言いました。
メンテナンスの為の塗装スタッフが40人いるのにもかかわらず、訪問者は橋の南の塔の部分で錆や塗料の剥げ落ちに気づいてしまいます。
という具合です。続いて記事はこの錆や塗装の剥げ落ちが塩気を含んだ霧が原因で起こっていると解説しています。
御年80歳を超えたこの橋は自殺の名所としても有名です。
塗装メンテナンスを担当する作業員が作業する場所も、大規模構造物に特有な揺れ+年齢による揺れの中での作業です。
この困難さをチーフエンジニアのエヴァ・バウアー・フォーブッシュに語らせています。
記事はこの後、建設中から今に至るまでの塗装メンテについて書かれていました。
興味を持った点が2つ在りました。
①橋は1935年建設当初鉛含有の下塗り剤に同じく鉛含有の上塗り(インターナショナル・オレンジ)で塗られています
腐食が進行すると、元の鉛ベースの塗料(プライマーとトップコート)を除去して、それを無機亜鉛シリケートプライマーとビニルトップコートに置き換える、というプロジェクトが1968年までに始まり、1995年に完了をします。
途中1990年に、トップコートが大気汚染防止法(揮発性有機化合物またはVOC)にひっかかるとして、ビニルエマルジョンからアクリルエマルジョンに変更されました。
この鉛系の塗料が非鉛系に切り替えられることになったきっかけは、1950年当時、鉛中毒の知識が広まり、行政が対応した結果です。
全ての根源は、はるか昔、人類が各分野において鉛を大規模に使うようになったからです。
鉛塗料は最初、錆止めにもなるし、着色顔料としても優秀で、硬化の促進もできる、いいことづくめの塗料でした。
日本でも海外でも、おしろいの鉛白による中毒というのはすぐに知られるようになりましたが、鉛含有塗料が劣化したときに出る粉や破片を吸い込んだり、口にしてしまった子供に発育不全や神経麻痺中毒が出るということが一般常識となったのは、ハイオクガソリンに入っていた鉛によって問題が起こった1970年代です。
アメリカでは、屋内に塗られるペンキにも鉛が含まれているケースがあり、特に低所得層向け賃貸では今でも問題視されています。
色々問題を起こした金属ですが、管理された状態では非常に有益なので生産量は増加しています。
主な用途は、現代の喫緊の課題である電池需要です。
②橋のメンテナンスの人員募集
ゴールデン・ゲート・ブリッジは、英語の公式表現で言う、District(直訳で地方、日本の同じような組織名を使えば、公団?)により運営されています。
ホームページもありまして、それには人材募集のページもあり各種業種が募集されています。
橋メンテナンスで一番?重要なペンキ塗りの部門では「塗装監督」が募集されていました。(2018年11月現在)
6ページに及ぶ応募要項には、必要な資格・免許・学歴・知識・鉄構造物と塗装業務への職能・部下管理に関して必要事項がいっぱい記述されているのに加えて、現代の事務仕事に欠かせないエクセル・ワード・e-mailをはじめとする文書と予算管理まで必要だと書いています。
ご興味が有る方はこのページで詳細が見られます。
http://www.goldengate.org/jobs/documents/Paint%20Superintendent_2018-11-01_15h30m52s.pdf
笑らえたのが、10年間の飲酒・無謀運転無しの記録(何かしら、その記録をネットから印刷できるシステムが有るらしいです)提出と以下の身体能力:
①鉄構造物歩行/登り
②梯子上り・下り
③呼吸器保護具を着用能力
④高所作業
⑤必要に応じて、すべての気象条件で屋外で作業できること
②の梯子の上り・下り まではっきり書くところが如何にもアメリカ流。 おわり