有機溶剤中毒予防規則について

有機溶剤とは

有機溶剤とは の過去記事を見る

過去の記事にもある通り、有機溶剤は溶解・抽出・洗浄などに用いられる有機化合物の総称です。主に、他の物質を溶かす性質をもっていて、工業用分野以外では「溶媒」とも呼ばれています。

有機溶剤は一般的に揮発性が高いものが多く、気体として排出されると作業者の呼吸を通じて、また皮膚からも吸収されてしまいます。悪臭の原因となる物質を含んでいたり、体に悪い物質を含んでいるものもあり、注意が必要なのです。

そこで存在するのが、有機溶剤中毒予防規則(通称:有機則)です。

 

有機溶剤中毒予防規則

有機溶剤とは」のページの下部、有機則での分類の項目でも軽く触れましたが、労働安全衛生法で定められた有機溶剤を分類したものです。

有機則では、その指定した有機溶剤を更に第一種、第二種、第三種に区分して、その標記の数字が小さいほどに毒性が高いものとしています。

有機則で指定された物質を下記の条件で使う場合は、使用上の義務が発生してきます。

 

対象環境

有機溶剤業務の基準

有機溶剤業務 次の各号に掲げる業務をいう。

  • イ 有機溶剤等を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌かくはん、加熱又は容器若しくは設備への注入の業務
    ロ 染料、医薬品、農薬、化学繊維、合成樹脂、有機顔料、油脂、香料、甘味料、火薬、写真薬品、ゴム若しくは可塑剤又はこれらのものの中間体を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌かくはん又は加熱の業務
    ハ 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
    ニ 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
    ホ 有機溶剤等を用いて行うつや出し、防水その他物の面の加工の業務
    ヘ 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務
    ト 接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着の業務
    チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)又は払しよくの業務
    リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗装の業務を除く。)
    ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
    ル 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務
    ヲ 有機溶剤等を入れたことのあるタンク(有機溶剤の蒸気の発散するおそれがないものを除く。以下同じ。)の内部における業務

参考文献:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000036_20200828_502M60000100154

屋内作業場の基準

令第六条第二十二号及び第二十二条第一項第六号の厚生労働省令で定める場所は、次のとおりとする。

  • 一 船舶の内部
    二 車両の内部
    三 タンクの内部
    四 ピツトの内部
    五 坑の内部
    六 ずい道の内部
    七 暗きよ又はマンホールの内部
    八 箱桁の内部
    九 ダクトの内部
    十 水管の内部
    十一 屋内作業場及び前各号に掲げる場所のほか、通風が不十分な場所

参考文献:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000036_20200828_502M60000100154

 

 

また、一方で上記の条件で指定物質を使うけれども有機則に該当しない場合もあります。

 

※有機則の対象外※

法律上、有機則に該当すると定められた物質を対象業務・場所内で使う場合でも、使用量が基準を下回る場合、所轄の労働基準監督署に申し出れば、適用外の認定を受けることができます

 

認定を受けなければ、使用量が少なくても、これからご説明する使用上の義務が発生してしまいますので注意して下さい。

 

※例外対象となる基準は次の通りです。

 

使用量の基準

使用量の基準となるのが、作業場の気積です。気積とは、空間の大きさの事を言います。

勿論作業場には作業する設備などもありますから、その設備の体積は除いた空間の大きさです。

それを下の備考も参考にしながら計算すると、有機溶剤の許容消費量が分かります。

 

消費する有機溶剤等の区分有機溶剤等の許容消費量
第一種有機溶剤等W=(1÷15)×A
第二種有機溶剤等W=(2÷5)×A
第三種有機溶剤等W=(3÷2)×A
備考 この表において、W及びAは、それぞれ次の数値を表わすものとする。
W 有機溶剤等の許容消費量(単位 グラム)
A 作業場の気積(床面から四メートルを超える高さにある空間を除く。単位 立方メートル)ただし、気積が百五十立方メートルを超える場合は、百五十立方メートルとする。

参考文献:https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=347M50002000036_20200828_502M60000100154

 

 

 

有機則該当溶剤使用上の義務

上記の例外に当てはまらなかった、あるいは当てはまってはいたが申請しなかった場合、下記の義務が発生します。

 

従業員への周知

有機溶剤中毒予防規則に該当する有機溶剤を使用する際は、見やすい場所に区分の表示使用上の注意事項、その有機溶剤を使うと、どのような懸念事項が人体におこるのか、万が一中毒などが起きた際の応急措置方法を掲示しなくてはいけません。

 

作業主任者の選任

屋内の作業場で有機溶剤を使った仕事をする際は(試験研究業務を除く)、作業の主任者を選任しなくてはいけません。

主任者の仕事は以下の通りです。

  • 作業の方法を決定し、労働者を指揮すること
  • 換気装置を一カ月以内ごとに点検すること (換気装置の種類については下記)
  • 保護具の使用状況を監視すること
  • タンク内作業における措置が講じられているか確認すること

 

換気装置について

使用する有機溶剤に合った換気装置を設置する必要があります。

(どの装置も毎月作業主任者が点検をし、装置によっては年に一度の定期検査と、その結果を3年間保存させることが必要)

 

局所排気装置

発散源の近くにフードを設置して、そこから局所的に吸い込んでもらいます。吸い込んだ空気はダクトを経由し排気ファンにより外部に排出されます。吸引力によっては気流が合わずに、作業に影響を及ぼす恐れもありますが、低コストで運用できます。

 

プッシュプル型換気装置

一様な補足気流を発生させ、揮発性物質の蒸気をかき混ぜることなく、発散源からフードへ誘導してくれます。密閉式と開放式の2タイプがあります。局所排気装置よりも風速を抑えることができ、作業への影響が少ないことが特徴です。一方で設備が大がかりで設備費、運用費がかかってしまいます。

全体換気装置(+呼吸用保護具)

外気を吸気口から作業場に入れ、場内の揮発性物質の蒸気を希釈しながら排気口から外部に排出する装置です。

※第三種有機溶剤をタンク等の内部での作業に使用する場合のみ(吹き付け作業で使用する場合を除く)

 

 

保管と廃棄について

保管する際は、漏れたりこぼれたりしないような、栓がしっかりできる丈夫な容器に入れ、更に施錠できる、風通しの良い所で保管します。

使い終わった空の容器も、その内部に残った溶剤が揮発して発散しないよう密閉したり、所定の集積所に集めなければなりません。

 

 

作業環境測定について

第一種有機溶剤・第二種有機溶剤を使う屋内作業場では、

最低6か月に一回定期的に作業環境測定士(国家資格)による作業環境測定を実施しなければいけません。

もし社内に作業環境測定士がいない場合は、登録を受けた作業環境測定機関に測定を委託してください。

 

測定結果に基づいて、迅速に改善しなければならなかったり、改善の努力をしなければならないなどの指示があります。また、その結果・記録は3年間保存しなくてはなりません。

 

 

健康診断について

第一種有機溶剤・第二種有機溶剤を使う仕事に常時ついている人は、その業務に就いた際と、その後、最低6か月ごとに1回、定期的に健康診断を実施しなければなりません。

第三種有機溶剤を使う場合はタンクなどの内部での仕事に限ります。

 

更に健康診断の結果を本人に通知したうえで、その結果を5年間保存しなくてはいけません。

また、その結果の報告書を労働基準監督署に提出する義務があります。

 

 

 

 


 

 

以上の義務は毒性が高いとされる有機溶剤を少しでも安全に使うためのものです。

有機則に該当しない程の少量であっても、有機則に該当しない溶剤であっても、しっかりとした保管、しっかりとした換気をするに越したことはないと言えますので覚えておくと便利です。

三協化学製

有機則非該当洗浄・剥離剤一覧はこちら!

 

 

>

記事に関するご質問はコメント欄からお問い合わせ下さい。 弊社製品に関する内容は以下のボタンから問い合わせフォームよりお問い合わせください。

CTR IMG