有機溶剤は何故毒性が高いの?

有機溶剤をここまでいくつも紹介してきましたが、

大抵の有機溶剤には、

毒性があって――、取り扱いには注意が必要で――

というような注意喚起をしています。

 

何故有機溶剤は毒性が高いのか、有機溶剤以外も視野に入れてみていきます。

 

 

すべての物質は毒になる!?

以前アメリカで、水をひたすら飲み続ける大会に出場した参加者が、大会後に水中毒で亡くなる事故がありました。

トイレを我慢し、大量の水を飲み続けたそうです。

生物や化学に馴染みのない方は、「水を飲んだだけで死んじゃうの!?」と思われるかもしれません。

実は水だけでなく、全ての物質は過剰に体内に取り込まれると害を及ぼします。

害を及ぼすまでに必要な量が物質によって違うだけなのです。

 

16世紀活躍した、パラケルススというスイス人医師は(後に「毒性学の父」と呼ばれる)

「全ての物質は毒になり、服用量が毒になるかそうでないかを決める」

という言葉を残しています。

 

 

よほど偏食しない限り、食べ物が毒になることは通常あり得ません。

 

例えばひじきにヒ素が含まれていることを理由に、イギリスやカナダがひじきを食べないよう勧告を出したことがありますが、

私たち日本人になじみ深いひじき料理は、水戻しや煮込み調理の過程を踏むため、ヒ素含有量は低くなり、毎日大量に食べ続けたりしなければまず中毒になることはありません。

 

 

少量でも害になってしまうもの

全ての物質は毒になる、という言葉を先ほどご紹介致しましたが、

全ての物質はまず「無機系」「有機系」に分けられます。

 

無機系の物質で危険性が有名なのは、

青酸化合物(「シアン化合物」とも呼ばれる)、や一酸化炭素などです。

 

青酸化合物はビワやアンズ、ウメなどの熟れていない状態の実や種に多く含まれています。

一酸化炭素は、物が燃えた際に酸素が足りないと発生する気体です。

それぞれ、体内に取り込まれると、体の中の酸素を独占し結びついてしまい、体を酸欠状態にし、最悪死に至ります。

 

 

有機系の物質で危険性が有名なのは

トルエンキシレンなどです。

 

塗料やインキ、接着剤や農薬に含まれており、

これらは中毒性があったりシックハウス症候群を起こす原因となります。

継続的に吸入したりすると最悪回復不能の脳障害を起こす恐れもあります。

 

 

一般的に有機系の物質は無機系のものと異なり、

呼吸器や消化器からだけでなく、皮膚にその物質が付着すれば皮膚からも取り込まれやすいため危険性が高いと言われています。

 

 

 

有機溶剤による障害の起こり方

有機溶剤は、それが揮発して蒸気になったものを、吸い込んで体内に取り込まれてしまうことが多いですが、

皮膚に液体がくっついた場合は、皮膚からも吸収され、肌の痛みを生じます。

さらに毛細血管から血液中に入り、全身にまで回ることもあります。

皮膚に炎症や傷、乾燥があればそれだけ体内に吸収されやすくなってしまいます。

 

有機溶剤による障害の起こり方は主に下の3つです。

①皮膚または粘膜(眼、呼吸器)に付着し、その部位で作用する

②皮膚または粘膜から吸収された後、全身に循環して即時に障害を起こす(急性症状)

③長期にわたる反復吸収によってその物質が特定の器官(標的臓器)に蓄積され、障害をおこす

 

 

特に皮膚から吸収されやすい有機溶剤

  • テトラクロロメタン
  • 1,1,2,2-テトラクロルエタン
  • 二硫化炭素
  • トルエン
  • キシレン
  • イソブチルアルコール
  • エチレングリコールモノメチルエーテル
  • エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
  • エチレングリコールモノブチルエーテル
  • クレゾール
  • 1,4-ジオキサン
  • N,N-ジメチルホルムアミド
  • テトラクロルエチレン
  • 1-ブタノール
  • メタノール
  • メチルイソブチルケトン
  • メチルシクロヘキサノン
  • メチルブチルケトン

 

有機溶剤を取り扱う際の注意事項

有機溶剤は、水では溶かせない油や脂肪、ゴムなどを溶かすことができるため、多くの製造現場で使われています。

特に使用量が多いとされているのは接着や塗装、印刷、洗浄に関わる業種です。

業務などで有機溶剤を使われる際は、体に直接触れることがないよう、必要に応じて手袋保護衣を着用することが推奨されます。

 

しかしそれらを着用していたとしても、

それが耐溶剤性の仕様でなければ意味がありません。

使用する溶剤に対応した保護具を着用してください。

 

また、耐溶剤性があったとしても溶剤が付着したのを放置しておけば、

時間の経過と共に分子レベルで素材に浸透していきます。

そうすると長時間の作業により、浸透してきた溶剤が保護具内で揮発することなく皮膚に密着した状態になり、かえって危険な場合があります。

溶剤が付着した場合はすぐに拭き取り定期的に保護具を新しいものに交換してください。

 

 

 

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