アンチダンピングについて

アンチダンピング<Anti-Dumping>とは

昔は、”アンチ巨人”と”反自民”という言葉が巷で聞かれました。

どちらも強いチーム/組織に対する反感です。(今の巨人軍は憎まれるほど・・・。)

 

アンチダンピングの「アンチ」も同様に「反対の」という意味です。

ダンピングは「安売り」のことで、結論から言うとアンチダンピングとは、「反対の+安売り」の造語です。

 

私たちがこの言葉を聞くのは、ニュース番組だけです。

つまり普段の生活には関わりのない言葉なのです。

 

今世界では、できる限り公正な貿易取引を行おうと、スイスのジュネーブに本部がある、世界貿易機関(World Trade Organization/略称WTO)と呼ばれる機関があります。

かつてのGATT、お誕生日を35回以上迎えた年長さんの皆様が学校で習った「関税と貿易に関する一般協定」の協定が1995年に世界機関として再出発したものです。

 

 

この組織の目的は、以下の3つを基本原則としています。

  1. 自由(関税の低減、数量制限の原則禁止)

  2. 無差別(最恵国待遇、内国民待遇)

  3. 多角的通商体制

 

関税をコントロールし、全ての貿易相手国に均等に適用することが貿易の円滑な流れの鍵となります。

WTO協定はこれらの原則を支持しているが、一部の状況において例外を認めています。それは以下の3つです。

 

  1. ダンピングに反対する行動(不当に低価格で売られたら、仕返しに出る)
  2. 助成金を相殺するための補助金及び特別の「相殺」義務
  3. 国内産業を「保護する」ために一時的に輸入を制限する緊急措置

 

Cは、ニュースでは「セーフガード発令」などと呼ばれています。

Bは、これもテレビで、フランスの農家が政府から受けた補助金で作り上げた乳製品を外国に輸出して・・・と報道されたことがあります。

Aは、相手が安売りしてきたらそれに対する行動を起こす。これがアンチダンピングです。

 

但し実際のアンチダンピングには、競争する国内産業に真の(重大な)傷害がある場合にのみ政府はダンピングに対抗することができ、

実際に重大な傷害となるかどうかは、多くの場合国内産業が発議してその国と安売りしたと言われた国の政府が共にジュネーブの本部の裁定に委ねるのが普通です。

ジュネーブの裁定で、安売りしたと言われた国の企業の付けた値段は安売りではないとされることもあります。この場合にはアンチダンピング課税はできません。

 

現地国での調査を経て裁定されるので、この裁定には加盟国は従わざるを得ません。

 

 

ダンピング(安売り)と判定された場合、GATT(第6条)の時代より、各国はダンピングに対処することができます。

現在のWTO反ダンピング協定は、第6条を明確化+拡大化したものです。

これは通常、ダンピング防止措置は、特定輸出国の特定製品に通常にはない追加的な輸入関税を課すことを意味し、輸入国の国内産業への負傷を取り除くため、関税をコントロールして、貿易相手国間を差別しないというGATTの原則を破るような処置を可能にしています。

細かい計算方法は、通商産業省も英語版の解説書を出していますので、ご興味がある方は時間が有る時にそちらをお読みになることをお勧めします。

 

反ダンピング措置(アンチダンピング)は、措置を終了することが損失に繋がるとの調査が示されない限り、措置発動の日から5年後に失効します。

アンチダンピングの調査は、当局が「ダンピングの余地があまりにも小さい(製品の輸出価格の2%未満と定義されている)」と判断した場合にも直ちに終了します。

他にも、たとえばダンピングの輸入量が無視できるほど少ない場合(ある国からの輸入量がその製品の輸入総量の3%未満であれば)調査を終了しなければならないなどの条件があります。

 

実際の所商売の値段は、売る側としては高いほど良くて、買う側とおしては安いほど良いのです。

相手国の安売りで被害を受けるのは、同じものを国内市場に売っている業界で、消費者ではないところがこの問題の難しいところです。

その消費者も、自分の会社の製品と競争する外国製品がダンピングで輸入され自社製品が売れなくなれば、それはそれでダンピング反対となるのです。

 

経済が複雑な物流で成り立つ現代は、A国とB国の2か国間の問題では済まず、“風が吹けば桶屋が儲かる”の連鎖を見極めないと、簡単に判定できません。

 

Dumping の訳には「投げ捨てる」の意味もあります。

時代劇の物売り場面で売り子が、値引いて安くしてもちっとも買ってくれない見物客に投げ捨てる「持ってけドロボー!」の言葉は、日本語vs英語の文化がくしくも一致していた結果だと思います。

 

 

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