塗料の歴史①

塗料とはなにか

刷毛塗装

 

 

一口に塗料と言われた時、皆様は何を想像しますか?

「塗装について①」の記事でも触れましたが、塗料が塗られるものを「保護」し「きれいに見せる」だけでなく「何かしらの機能を付加」すると言うのが一般的なところでしょうか。

初めから脱線すると、今では泥棒さんや狸やネズミなどが柱、電柱等に昇らないように塗る〝滑る塗料〟と逆に〝滑らない様な塗料〟もあるそうで、

これからお話する内容も出来る限り〝滑らない様〟(つまり脱線が度々ありますと言う前振りです)にいきたいと思います。

 

 

もしも皆さんが日本だけでなく英語の世界で塗料の歴史を知ろうと「Paint History」 と検索すると「絵画の歴史」についての記事がヒットします。

そうです、「塗料」を英訳すると「Paint」 で良いのですが、それは絵画の意味も併せて持ちます。

理由は後々お話しますが、絵画と塗装/塗料は、その成立と発展において切っても切れない関係があるからです。

ちなみに英語で正しく塗料と塗装の歴史を調べるためには、「Paint Coating History」 とタイプしてください。ドドッと出てまいります。

 

「ペンキ」と言うのはもちろん明治の西洋文明輸入期に当時の人の耳が聞き取った「Paint」 のことです。

「ニス」と「ワニス」も同じような経緯で”Varnish(ヴァーニッシュ)”が「ワニス」という書き方で紹介され、ついには「ワ」が省略されて「ニス」となったらしいです。

従って「ニス」と「ワニス」は同じモノです。

車の塗料飛行機の塗料で出てきた「ワニス」のことです。

 

 

樹脂、顔料等の役目に分かれたのはつい最近

今を生きる私たちは、 塗料=樹脂+顔料(+添加物)+溶剤 が基本的な構成と知っていますが、

そもそも「元始女性は太陽であった」と言われる頃には、「何か」を保護するために「アレ」を塗ろうという考えはなかったと思われます。

 

「何か」は土器や武器、原始宗教の祭器・礼器。

「アレ」は地表に湧き出した原油の揮発成分が抜けて残った天然アスファルト(固形、タール状)かです。

ただし、アスファルトは接着剤の役目、漆は色と接着剤の役目と思われます。

今、塗料本体と理解されている樹脂成分が現在なら他の材料が行う色をつける顔料としての2つ目の役目をいわゆる1液(アスファルトは液とは言い難いのですが)で果たしておりました。

色を付ける顔料はある時期までは素材そのものが持つ色が活用されたという事です。

 

原始から先史になる頃(約18,500年前頃と約16,500年前~14,000年前頃)、アルタミラ洞窟や12,000年前のインドの世界遺産Bimbetka岩のシェルター壁画が描かれます。

これらは天然色素の絵の具、土の色素(黄色とumber:ウンバー酸化鉄および酸化マンガンを含有する褐色または赤褐色)、酸化鉄、木炭(黒)、果実ベリージュース、ラード、血液、骨・カルシウム(白)などで描かれました。

記録上としては、紀元前400年頃に生きたギリシャの哲学者プラトンが2色を配合して新しい色を作るまで、色の配合の考え方はなかったとされています。

 

古代人にとって赤い色は(血の色であり)命の元である認識は有ったようで、世界最古であることが放射性炭素(C14)年代測定法で確かめられた、福井県鳥浜貝塚などから赤漆の櫛が出土しています。(北海道垣ノ島遺跡が最古の説もあり)。

中米アステカのインディアンにとっては、赤の染料は金より価値が高く、彼らと中国でカラーヒーリングを実践したそうです。

古代より祈りの場に使われた朱色は、生命そのものを現すとともに、古来災厄を防ぐ色として魔力に対抗する色ともされていて、宮殿や神社仏閣に多く用いられています。

朱の原材料は水銀=丹で、これは昔から木材の防腐剤として使われてきました。

通常材木が腐るとは、木材腐朽菌が木の成分を栄養として生活し、木を分解するためです。

ただし、木材腐朽菌が活動して木を腐らすためには、水、空気、適度の温度の三つの循環がそろわなければなりません。

材木はセルロースという網の様な成分と、カゼインと言う糊成分でできています。

水がかからない室内の場合にはカゼインが分解して痩せ凹、年輪部分のセルロース部分が残る凸程度で済みますが、

外に放置した材木は、雨風日光に晒されると木の種類にも寄りますが短時間で風化分解します。

寒さの中で200年かけて大きくなり、年輪間隔が非常に詰まっている(セルロース間隔が狭い)秋田ヒバは酸性温泉の湯舟に使用すると、コンクリート製より持つそうです。(※但し、乾燥するサイクルが入れば耐久性は変わってきます)

 

 

復習:塗料(ぬる材料)、塗装(ぬってつつむ)

「塗」とは、神として祭るための立柱を泥をこてで「ぬり」固めるたことから「ぬる」

「料」は米を枡で測ったのから出来たいくつかの意味の内「もとになるもの、材料・原料」

「装」はしまう/かくすの意味+衣服のえりもとの象形から、「身をつつむ」を意味します。

 

 

先史時代の筆は指?

ブラシやローラー、近代的にはスプレーを使い塗装するよりはるか昔、原始絵画は苔、枝を噛んだ端、および自分の指を使って描かれました。

筆が登場するのは日本では縄文時代と言われています。

 

これは、遺跡から出土する弁柄や朱の彩色品をどうやって塗ったかから類推されています。今の筆や刷毛とは違うもっと原始的なモノであったことは容易に推測できます。

古代エジプト人は砕いた葦の先を筆として使い、象形文字を絵描いていました。

 

火を使い始めた人類が燃えカスの炭を鉛筆代わりに使ったかもと言う事は容易に想像できることですが、

一万年以上前世界が狩猟時代だったころ、獲物の皮は衣服に、尾先は(全ての人々がしたかは不明ですが)筆にしたと考えられています。

ブラシの語源はイノシシや豚の剛毛を示す、(取れるのは背や首)Bristles ブリスル 発音:brisl から来ているのです。

 

その後現世人類が農耕を初めて人口が飛躍的に増えるのですが、その過程で各種の生きる技術・道具が発明・改良されました。

4世紀以降敦煌・莫高窟が作られる時、仏教壁画(フレスコ画)を描いたのはその繊細さからかなり進化した筆であったのではないかと考えられます。

飛鳥時代、奈良時代には大陸からの渡来品含めかなりの筆、刷毛が整っていたようです。それでないと、古事記や日本書紀が書けませんし、漆仕上げの玉虫厨子が出来ません。

 

近代的な刷毛は黒船でペリー提督が開国をせまった以後、横浜等に駐在した欧米人が持参したペンキ塗り用の刷毛のコピー品の作成を日本の職人に依頼したことで始まりました。

 

 

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