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有機溶剤

2025.06.19

トリクロロエチレンとは?わかりやすく解説

トリクロロエチレンとは?わかりやすく解説

トリクロロエチレンについて、わかりやすく解説します。

 

 

トリクロロエチレンとは

トリクロロエチレンとは、塩素系有機溶剤の一つでトリクロルエチレン三塩化エチレントリクレンとも呼ばれています。

常温で液体、無色透明です。特徴的な臭気があります。有機溶剤としては珍しく不燃性です。

塩素系有機溶剤とは、炭化水素類の水素を塩素で置き換えたものです。溶解力が強く洗浄性に優れ、乾燥が早く、燃えにくいというメリットがありますが、毒性が強いため各種法令により規制されているものが多いです。代表的な塩素系有機溶剤としては、トリクロロエチレンのほかに、メチレンクロライド、テトラクロロエチレンなどがあります。※クロロとは塩素のことです。

※有機溶剤については、「有機溶剤とは?わかりやすく解説します」で丁寧に解説しています。

トリクロロエチレン構造式

トリクロロエチレンの化学式はC2HCl3です。炭素(C)が2個、水素(H)が1個、塩素(Cl)が3個でできています。

トリクロロエチレンの主な特徴は以下の通りです。

項目 概要
名称 トリクロロエチレン
別称 1,1,2-トリクロロエテン、1,1,2-トリクロロエチレン、トリクレン、三塩化エチレンなど
CAS番号 79-01-6
化学式 C2HCl3
引火点(℃) なし
発火点(℃) 410
沸点(℃) 87.2
比重 1.456
有機溶剤中毒予防規則(有機則) 非該当
特定化学物質障害予防規則(特化則) 特別有機溶剤等
PRTR制度(PRTR法) 第1種指定化学物質
消防法 非該当
毒物及び劇物取締法(毒劇法) 非該当
悪臭防止法 非該当
船舶安全法 毒物類・毒物
大気汚染防止法 有害大気汚染物質、指定物質、優先取組物質
水質汚濁防止法 有害物質
土壌汚染対策法 特定有害物質

トリクロロエチレンは、水にはほとんど溶けません(25℃で0.11g/100g)が、アルコールやジエチルエーテル、アセトン、ベンゼン、酢酸エステル、脂肪族塩素化炭化水素、ガソリンなどの通常の有機溶剤と完全に混ざります。さらに油や樹脂に対して強力な溶解力を持ちます。さらに燃えにくいため消防法の規制を受けません

一方で、環境負荷が大きいとしてPRTR制度や大気汚染防止法、水質汚濁防止法、土壌汚染対策法などで指定されているほか、発がん性があるとして特化則でも規制されています。

トリクロロエチレンの特徴

 

トリクロロエチレンの利用

トリクロロエチレンは、脱脂力、樹脂溶解力が高く、燃えにくい溶剤のためさまざまな用途で多用されました。

1920年代に大豆やココナツ、ヤシなどの植物油の抽出に用いられ始め、麻酔やドライクリーニングの溶剤、金属の脱脂洗浄や乾燥、塗料の薄め液、リムーバー、冷媒、アルコールの脱水蒸留などで使われてきました。

毒性があることから1970年代以降、多くの国々で食品や医薬品での使用が禁止されています。

 

トリクロロエチレンの毒性

トリクロロエチレンは、吸い込んだり、皮膚や粘膜に付着したり、飲んでしまったりして体内に取り込まれると、中枢神経や肺、皮膚、粘膜、消化器系、肝臓、腎臓に障害を起こし、がんになる恐れもあります。

短時間に大量に蒸気を吸い込むと、眼や鼻、のどに刺激を感じ、続いて頭痛やめまい、吐いてしまう、アルコール酩酊と同じような症状が現れ、意識を失って倒れてしまうこともあります。

繰り返しまたは長期間皮膚にふれると脱脂作用によって皮膚炎を起こします。また蒸気や飛沫が眼に入ると涙が出て、灼熱痛を伴い、炎症を起こします。

飲み込んでしまうと吐いたりや下痢などの胃腸管刺激症状が現れ、眠気を催し、腎臓機能が停止し意識を失います。

実際に、下記のようにトリクロロエチレンの急性中毒による死亡事故も相次いでいます。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト 脱脂用洗浄機に残存していたトリクロロエチレンにより急性中毒

厚生労働省 職場のあんぜんサイト トリクロロエチレンを用いて脱脂槽の洗浄作業中、急性有機溶剤中毒

こうした高い毒性によりトリクロロエチレンは、特化則の特別有機溶剤等に指定されています。

また、トリクロロエチレンは代表的な地下水汚染物質でもあり、工場排水により土壌が汚染されると、地下水に浸透し、長期にわたり地下水汚染が続きます。このため、PRTR制度や水質汚濁防止法などで規制されています。

特化則とトリクロロエチレン

トリクロロエチレンは、2014年までは有機溶剤中毒予防規則上の第1種有機溶剤でしたが、発がん性があることから、より規制の厳しい特定化学物質障害予防規則(特化則)の特別有機溶剤等に移行しました。

トリクロロエチレンを取り扱う場合は、年に2回の特定化学物質健康診断、作業環境測定の実施、健康診断や作業記録、作業環境記録の30年間保存などの特化則の細かな規定に従う必要があります。違反した場合は罰則もあるので注意してください。

特化則については、別記事「特定化学物質障害予防規則(特化則)とは?対象の有機溶剤などもわかりやすく解説」で詳しく説明しておりますので、併せてご覧ください。

PRTR制度とトリクロロエチレン

トリクロロエチレンは、環境中に放出されると分解されにくく、環境汚染の原因物質になるため、PRTR制度の第1種指定化学物質に指定されています。

PRTR制度(PRTR法)とは、化学物質から環境を保護することを目的とした制度で、化学物質排出把握管理促進法によって定められています。

このためトリクロロエチレンを一定以上取り扱う事業者は、化学物質の排出量や移動量を記録し、都道府県を通して経済産業省へ届け出なければなりません。

制度の詳細は別記事「PRTR制度(PRTR)とは対象の有機溶剤などもわかりやすく解説します」をお読みください。

脱トリクロロエチレンの流れ

トリクロロエチレンは、有機溶剤として優れた性質を持っていますが、毒性が高く、取り扱うには各種法令を守る必要があります。

そのため、トリクロロエチレンを使ってきた事業者の間では、少しでも安全性が高いものへの代替が進んでいます。

そるぶ

トリクロロエチレンには、依然として代替できる物質がなく、トリクロロエチレンでなければならない用途もあるよ。
その場合はSDSを読み、しっかり管理し、安全に配慮して使おうね!

三協化学のトリクロロエチレン関連製品

弊社のトリクロロエチレン関連製品には以下のようなものがあります。

トリクロロエチレン(三塩化エチレン、三塩化エテン、トリクレン、トリクロルエチレン)

トリクロロエチレンの代替品としては、用途別に以下のような商品があります。

用途 商品名 特徴
脱脂洗浄 脱脂用メチレンクロライド、シンナー代替 メタルクリーナー#770 環境対応型の炭化水素系脱脂洗浄剤、洗浄力と乾燥性のバランスに優れる
樹脂溶解 樹脂溶解用アセトン、メチレンクロライド代替 ファインソルブE 環境対応型樹脂溶解剤、樹脂溶解力と乾燥性に優れる
樹脂剥離 ジクロロメタン(塩化メチレン)代替 強力剥離剤 ゾルカスEP-110 環境対応型強力剥離剤、エポキシ、ウレタンなど剥離可能

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